私立銀行については、九年に三井銀行が設立され、以後急激に伸び一六年には二〇七行に達し、国立銀行数を大きく上回った。私立銀行の設立が相次ぐ中で、経営規模の小さい弱小銀行が乱立した。そのため政府は、一五年五月銀行経営の健全化を確保するため、私立銀行の設立許可の権限を大蔵省に統一し、併せて免許制とした。このため約一〇年間の伸びは鈍く、二五年の二七〇行までその数を徐々に伸ばしたにすぎなかった。しかし、銀行条例の施行により、銀行類似会社が解散となることにより、二六年銀行数は一気に六〇六行に跳ね上がった。私立銀行のピークは三四年で、その数は一、八六七行に達した。
栃木県における最初の私立銀行は、阿蘇郡佐野町に設立された佐野(合本)銀行で一三年に設立された。一〇年代では一五年に設立された葛生銀行とともに、二行だけで、二〇年代に入ると小山銀行(二一年)・小林銀行(二二年)・粟野銀行(二二年)・下野銀行(二四年)・鹿沼銀行(二六年)・栃木銀行(二六年)・栃木農商銀行(二七年)・大田原銀行(二七年)・足利銀行(二八年)・烏山銀行(二八年)・鹿沼商業銀行(二八年)・古河銀行(二八年)・宇都宮銀行(二九年)・壬生銀行(二九年)・今市銀行(二九年)の一五行が開業した。こうした私立銀行開業のラッシュは、三〇年代の前半まで続き、その後は合併・再編を繰り返しながら統合されてゆく。
表5 私立銀行、銀行類似会社、国立銀行数と資本金の推移
年 次 | 私 立 銀 行 | 銀行類似会社 | 国 立 銀 行 | |||
行数 | 資本金 | 社数 | 資本金 | 行数 | 資本金 | |
  明治9年 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 22 23 24 25 26 |   1 1 1 10 39 90 176 207 214 218 220 221 218 217 252 270 606 | 千円 2,000 2,000 2,000 3,290 6,280 10,447 17,152 20,487 19,421 18,758 17,959 18,896 17,472 18,976 19,796 22,856 31,030 |   - - - - 120 369 438 573 741 744 748 741 695 702 678 680 - | 千円 - - - - 1,211 5,894 7,958 12,071 15,142 15,397 15,391 15,117 14,421 14,512 13,827 13,944 - |   5 26 95 151 151 148 143 141 140 139 136 136 134 134 134 133 133 | 千円 2,350 22,986 33,596 40,616 43,041 43,886 44,206 44,386 44,536 44,456 44,416 45,838 47,681 48,644 48,701 48,325 48,416 |
『日本帝国統計年鑑』、『足利銀行史』より