明治一四年末からのデフレ政策により本県でも一五年には急激に物価が下落した。宇都宮町の例をみると表17のようである。米は一四年の一石一〇円二五銭から七円九五銭にさがり、一七年には五円を割り込み、一八年に一時六円台を回復するが、また下落し二三年にようやく回復を見せるようになった。
増税の面をみるとすでに明治一三年に酒税が増税になっていたが、さらにたばこ税が増徴になり消費税が強化された。地方税では一四年に県の土木費への国庫下渡金が廃止されて、区町村の土木費は強制的に徴収できるようになった。明治一七年の区町村会法の改正・戸長官選制への移行の時に、役場費・会議費・土木費・教育費・衛生費・救助費・災害予防及び警備費を区町村費と決めて、区町村はそれを地価割、戸数割、営業割などとして府県税と同じように強制的に取り立てられることになった。それで土木費・教育費のような国の委任事務費が町村民の負担となって人々の生活に重くのしかかってきた。
そして、村々を賑わしていた煮売屋や居酒屋、小間物屋などの中には廃業する店も増えて一時期の活気も失われてしまった。
表17 宇都宮町の石当たり中等品物価の変化
明治・年 | 玄 米 | 搗 麦 | 大 豆 | 清 酒 |
8年 (1875) 9 10 11 12 13 (1880) 14 15 16 17 18 (1885) 19 20 21 22 23 24 | 円 銭 5.21 4.33 4.88 5.91 7.45 9.37 10.25 7.95 5.60 4.82 6.17 5.31 4.77 4.61 5.03 8.45 6.90 | 円 銭 3.44 2.93 3.01 3.90 6.21 7.48 6.67 4.62 3.50 3.34 3.44 2.59 2.05 2.47 2.45 5.88 5.23 | 円 銭 4.63 4.31 4.80 5.26 6.01 6.36 7.28 7.27 5.89 3.22 4.70 3.91 4.43 4.28 4.81 5.56 4.95 | 円 銭 5.81 5.42 4.31 5.18 10.67 17.78 15.34 20.93 11.83 12.17 15.69 12.00 11.78 12.80 9.54 12.10 12.01 |
注1 明治13年は酒税の増徴によって清酒の価格が急騰した
2 明治19年以降は殻麦か
3 商人の取引価格である
4 各年度『日本帝国統計年鑑』より作成
『栃木県史』通史編7近現代二・1頁より引用