ア 米の作付面積(A)、収穫高(B)の大幅な増加
(A)北高根沢三三八町、阿久津二九四町、熟田二〇五町の増加で計八三七町増加、割合では三六パーセント増加したこと
(B)北高根沢五、六四四石、阿久津六、七八五石、熟田八、三四二石の増加で計二万七七一石の増加、割合では六五パーセント増加したこと
イ 米の反収が玄米で平均一石三斗七升から一石六斗六升へと約三斗くらい増加したこと
ウ 麦類では大麦が作付面積で一三二町歩、収穫高で八四五石減少したが、それは北高根沢と阿久津で作付面積が約半分に減ったことによること。小麦では作付面積で一七二町歩、収穫高で五、二七五石の増加となっているが、それは北高根沢で作付面積が三一一町歩増えたことが主因であること
エ この間、大麦の反収は約一石二斗から約一石五斗へ、小麦は六斗から二倍の一石二斗へとそれぞれ増加していること
オ 麦類の田への作付面積が約四七町歩から一九二町と四倍に増え、乾田化による二毛作の増加がみられること
カ 粟、稗の作付面積が減少し、新しい作物として馬鈴薯が作られていること
キ エ芸作物では綿の栽培がなくなり、葉煙草、菜種、大麻、桑の栽培が増えたが、葉煙草と桑(養蚕)が工芸作物の中心になっていること
このような変化からみると、町域の農業は米作を中心とし、それに加えてたばこと養蚕が重要な工芸作物として登場してきたことがわかる。小作、自小作農の多い村々では米は平均五八パーセントを小作米として地主に納めなければならなかったから、現金収入はたばこと養蚕に頼ることになる農家が増えてきた。
図54 苗代かきと種蒔き(渡辺清「百姓絵日記」明治40年4月26日 渡辺弘蔵 写真提供 ミュージアム氏家)
作物名 | 反別・収穫高 | 北高根沢村 | 阿久津村 | 熟田村 |
米 | 作付反別 収穫高 | 1096.9町 1万7821石 | 635.0 7319石 | 595.5 ※6710石 |
大麦 | 作付反別 田 畑 収穫高 | 20.0 125.0 2620石 | 22.5 112.5 861石 | 4.4 71.5 651.0 |
小麦 | 作付反別 収穫高 | 195.8 1762石 | 214.9 541石 | 123.0 861石 |
大豆 | 作付反別 収穫高 | 18.5 128石 | 54.1 227石 | 24.6 135石 |
小豆 | 作付反別 収穫高 | 12.2 86石 | 25.9 108石 | 5.6 21石 |
粟 | 作付反別 収穫高 | 165.3 613石 | 27.6 195石 | 13.9 185石 |
稗 | 作付反別 収穫高 | 16.8 198.7石 | 58.1 597石 | 156.2 2505石 |
蕎麦 | 作付反別 収穫高 | 34.8 167石 | 4.5 91石 | 25.4 1463石 |
甘薯 | 作付反別 収穫高 | 37.7 42471貫 | 2.3 330貫 | 7.8 3864貫 |
里芋 | 作付反別 収穫高 | 33.5 35750貫 | 34.8 22200貫 | 10.1 3770貫 |
※原数字は671だが1桁間違えたものと推定 明治26年栃木県塩谷郡統計書より作成
表30 北高根沢・阿久津・熟田村工芸作物の作付け反別及収穫高(明治26年)
作物名 | 作付反別・収穫高 | 北高根沢村 | 阿久津村 | 熟田村 |
実綿 | 作付け反別 | 37.7町 | ―――― | 43.5町 |
収穫高 | 2259貫 | 2610貫 | ||
菜種 | 作付け反別 | ―――― | ―――― | 2.5 |
収穫高 | 3000貫 | |||
葉煙草 | 作付け反別 | 26.6 | ―――― | 2.0 |
収穫高 | 5426貫 | 380貫 | ||
桑畑 | 作付け反別 | 8.9 | 32.3町 | 8.8 |
養蚕 | 飼育戸数 春 | 182戸 | 85戸 | 20戸 |
夏秋 | 17 | 40 | 2 | |
掃立枚数 春 | 100枚 | 150枚 | 20枚 | |
夏秋 | 12 | 20 | 1 | |
収繭高※ 春 | 28石 | 140石 | 9石 | |
夏秋 | 14 | 13 | 4 |
※収繭高は繭、玉繭、出殻繭、屑繭の合計、夏・秋は両者の合計 同上書より作成
表31 明治41年北高根沢・阿久津・熟田村農作物作付面積及収穫高
作物名 | 作付反別・収穫高 | 北高根沢村 | 阿久津村 | 熟 田 村 | ||||
米 | 作付反別 収穫高 | 1435町7反 2万3465石 | 929町1反 1万4108石 | 800町6反 1万5052石 | ||||
大麦 | 作付反別 収穫高 | 田 畑 | 45.2 21.1 922石 | 51.0 26.0 1296石 | 60.6 21.0 1069石 | |||
小麦 | 作付反別 収穫高 | 田 畑 | 18.8 487.0 6070石 | 10.0 138.0 1956石 | 7.3 89.0 1077石 | |||
大豆 | 作付反別 収穫高 | 41.4 325石 | 25.7 348石 | 31.2 260石 | ||||
小豆 | 作付反別 収穫高 | 22.1 125石 | 12.5 45石 | 12.5 100石 | ||||
粟 | 作付反別 収穫高 | 31.0 410石 | 5.7 56石 | 3.0 15石 | ||||
稗 | 作付反別 収穫高 | 68.5 835石 | 36.5 324石 | 30.0 180石 | ||||
蕎麦 | 作付反別 収穫高 | 35.0 300石 | 5.8 40石 | 34.7 260石 | ||||
甘薯 | 作付反別 収穫高 | 18.8 1万8800貫 | 5.6 5600貫 | 12.5 1万2500貫 | ||||
馬鈴薯 | 作付反別 収穫高 | 8.7 1万440貫 | 4.5 4950貫 | 5.6 7280貫 | ||||
里芋 | 作付反別 収穫高 | 31.2 12万4800貫 | 19.6 7万8400貫 | 31.5 12万6000貫 |
「明治41年度栃木県塩谷郡統計書」より作成
表32 北高根沢・阿久津・熟田村の工芸作物作付け反別及収穫高(明治41年)
作物名 | 作付反別・収穫高 | 北高根沢村 | 阿久津村 | 熟田村 |
実綿 | ―――― | ―――― | ―――― | |
大麻 | 作付反別 | 3.0町 | 3.0町 | 3.0町 |
収穫高 | 600貫 | 600貫 | 540貫 | |
菜種 | 作付反別 | 18.0 | 5.5 | 9.8 |
収穫高 | 180石 | 55石 | 89石 | |
葉煙草 | 作付反別 | 83.4 | 16.9 | 10.1 |
収穫高 | 2万4044貫 | 4478貫 | 2857貫 | |
桑畑 | 反別 | 35.6 | 41.2 | 13.9 |
養蚕 | 飼育戸数 春 | 82戸 | 38戸 | 22戸 |
夏秋 | 102 | 46 | 10 | |
掃立枚数 春 | 181枚 | 122枚 | 58枚 | |
夏秋 | 91 | 35 | 10 | |
収繭高 春 | 124石 | 103石 | 48石 | |
夏秋 | 89 | 27 | 10 |
同前書より作成 収繭量は繭、玉繭、屑繭の合計
図55 田植え風景(渡辺清「百姓絵日記」明治40年6月5日 渡辺弘蔵 写真提供 ミュージアム氏家)