苗床 三.五坪の揚床、苗は達磨種のうち大達磨
耕作許可反別 一反一畝一〇歩(二筆)
植付け苗数 二、九七〇本、畦間三尺四寸、株間一尺二寸
元肥 菜種粕三斗七升、〆粕二斗三升、硫曹過燐酸二斗二升、藁灰縦俵二俵
補肥 菜種粕四斗、〆粕一斗八升、過燐酸三斗五合、トーマス燐三升、藁灰一俵半、人糞一荷
三番肥 七月四日藁灰一俵半、七日人糞四荷
備考 畦間ははじめ三尺二寸だったが申請と違うことが指摘され三尺四寸に直す、二度に苗を移植したので、二か所に分けて変更申請をする
渡辺 栄の明治三九年度分の記録は次のようである(「農事之友」)。
白鳥裏 約一反四畝歩 煙草
肥料 〆粕九斗(一〇円二五銭)、コマセ六貫目(二円)、二番肥種粕一ケ半(一円六〇銭)
賠償金 六二円
岡本の記録では肥料代金、収穫高、賠償金(売渡代金)が分からないが、栽培は申請通りに行わせ、申請と違っていれば植付けをやり直させ、二度に移植した所は二か所とみなして申請をやり直させるという厳しい指導がされていた。肥料については岡本、渡辺を較べると、岡本の方が種類も量も多く、専売所の指導に良く従っていたように思われる。渡辺の記録は簡単ではあるが、反当たり購入肥料代金は九円九三銭で、自給肥料分を加えなくても、前出の「農作物収支計算」の煙草の肥料代金の一・六倍になる。しかし、売買代金は反当たり四四円二九銭なので、その他の経費を差し引いても九円六七銭五厘の利益があることになる。したがって北高根沢村の平均では赤字になる「たばこ」も、反当たり収穫量を増やせれば、経費が多少ふえても、有利な商品作物であることを示している。大正四年の北高根沢村村是現況調査(史料編Ⅲ・一八七頁)によると、村の総生産金額は五四万四二八五円、うち三九万二五四一円(七三パーセント)が米麦等穀類、第二位が三万九八六二円(七・四パーセント)の煙草であり現金収入のための重要な作物であった。
図59 たばこの葉の乾燥作業(下柏崎 小堀政六提供)
図60 たばこの乾燥小屋(下柏崎 小堀政六提供)