ビューア該当ページ

昭和一三年の更生計画

547 ~ 554 / 794ページ
 村の職業構成を表17でみると全戸数八五三戸の八七パーセント・七四一戸が農業、一一パーセント・八九戸が商工業、その内七三戸は文挾・伏久、つまり仁井田駅前で駅前商店街を形成している。駅周辺を除くと純農村地域である。表17・18で農業を見ると、自作は一二〇戸(農家数の一七パーセント)と低い割合で小作・自小作農が六二一戸(八四パーセント)と高い割合である。耕地面積は一、七五七町五反歩、田が八二パーセント、畑一二パーセント、二毛作田は六八七町七反で田面積の四八パーセントである。田・畑とも七五パーセントが小作地である。
 熟田村の近年のありかたについて、調査は次のように見ている。大正七、八年の米価暴騰期に米作単一化が進み、耕地整理によって山林原野(明治期には約九四〇町歩)は一本の松も残さないまでに開田された。そして、耕地の増加が労力不足をもたらして二毛作の普及を不可能にし、生草、落葉など堆肥原料の不足が金肥万能主義の農業を生み出した。また、耕地の増加は担保物件の増加でもあったので借金による投機熱がおき、借入金は一〇〇万円を超えたが、米価の下落とともに「農業経営の一大恐慌時代」に立ち至ったと分析している。土地所有の変化については「他町村民の所有地の増加率が年々倍加」して自作農が減少し小作農が増加する傾向が著しくなったという。
 経営規模で見ると農業従事者一人当たり八反歩以下の経営は赤字経営、八反歩以上は黒字経営になるという調査結果から、一人当たり経営反別の指導にも留意し、二毛作と副業の奨励で経営規模の小さい農家の経営改善を進めなければならないとしている。また、発動機の普及率が四〇パーセントと他村より高く経営費の高くなる原因の一つかもしれないという。
 次に農家負債をみると最高期の一戸当たり一、六八二円、総額一一三万円余より五〇万円減り、六三万円強、一戸当たり九四〇円となっており、自力更生の成果も現れている。特に個人、銀行からの借入金返済が進み、残っているのは勧業銀行からの借入、すなわち耕地整理と土地買入資金の負債が中心であるという。借入金の利率をみると七分~一割未満のものが四六万円強・七二パーセント、一割~一割五分以上が約一六万円となっている。後者が個人からの借入金であろう。
 このような現状分析の結果から表19のような実行組織を作り一六年までの目標を、表20のように定めた。この組織は大政翼賛会が組織されるとそのまま翼賛会の村組織へ移行した。また、生産目標は修正はあったが、基本的には戦時食料増産目標として受け継がれていった。特に産業組合、農事実行組合関係の施設整備は着々と実施された。それらを既存のものも含めて列挙すれば次のとおりである。
 
 産業組合   農業倉庫五棟、籾貯蔵庫二棟
 動力利用組合 石油発動機、脱穀、籾摺、精米機三〇組分
 養蚕組合   稚蚕共同飼育所一棟、共同乾繭所一棟、桑苗圃(一反歩)
 副業組合   製叺機三〇台、製縄機三台
 農会     灰置場、搾油機一台
 部落実行組合 米麦共同採種圃(水稲五町歩、大小麦二町九反歩)、繭火力乾燥所、醬油搾取機・炉・釜各一組一〇組合分共
        同利用農具(水田除草機一紙二台、一六組合分、小麦播種器一組二台、六組合分、噴霧器一組一台、六〇組合分、リヤカー一台)
 
 以上が昭和一三年一月現在で経済更生計画で揃えた主な施設・設備である。この後も産業組合は経済更生特別助成金で共同作業所、集荷所、集積倉庫の建設、貨物自動車(木炭ガス発生装置付き・五、一五〇円)購入などを次々に行った。これらの施設は組合事務所の近くにまとめられたが、作業所には
 
一 肥料配合設備 発動機(七馬力)一、木炭ガス発生機(一〇馬力)一、粉砕機一、粉末機一、配合機一、台秤(五〇貫秤)一、其他計二、二〇〇円
二 精米麦設備 精米機一、精麦機一、昇降機(五俵掛)一、其他計七六〇円
三 縄仕上機一、其他計四〇〇円
 
 が備えられて、組合の共同販売・共同購入活動の拡張をもたらした。かくて、熟田村の経済更生計画は第二期というべき昭和一三年から一六年の計画を策定して、戦時体制に突入していったのである。

図24 熟田村の経済更生計画の実施の検討と再計画書(飯室 鈴木俊子家蔵)

表17 職業別戸数・人口
種別戸 数割  合人口(人)備    考
農業自作一二〇一四%八〇四養蚕業者一〇二戸
自作兼小作三五四四二%二四三五
小作二六七三二%一八六九
七四一八七%五一〇八
林業
漁業
商工業八九一一%五九四
其ノ他二三二%八三
八五三一〇〇%五七八五

表18 利用経営別土地面積
地目利  用  別経  営  別備考
一 毛 作多 毛 作自  作小  作
 七五五町〇 六八七町七 三六二町三 一〇八〇町四
 三四・二 二八〇・六 七七・二 二三七・六

表17・18ともに史料編Ⅲ・五五七頁より引用
 

表19 経済更生計画実行組織一覧表

表20(1)普通作物生産目標
物     作     畑作  裏稲 水
 烟
 草
 里
 芋
 白
 菜
 大
 根
 西
 瓜
 馬
 鈴
 薯
 甘
 藷

 豆
 大
 豆
 大
 麦
 小
 麦
 陸
 稲
 蕓
 苔
 紫
 雲
 英
5.027.331222.910.916.933.77.225.328.2206.9150.521.242596.734.51388.8別反付作 昭和十二年
1423004508007003562706.38.51.891.208.611882.071.671.92量収当反
7,1088,19014,04018,3207,6305,9159,09945.4215.15322,4831,29221.28402,04457926,634量 収 総
0.544〆 0.200.140.040.120.090.09(石)20円1811.5422.4027.292116.5931.3730.60価  単
3,86816,38019,6567,3289,1565,3248.1899083,8726,13955,61935,2584,45233,91019,163815,400入 収 粗
6,5529,81810,0004965,3248,19036.4194.1266497646438406142908,173量数用家自
7,1081,6384,2128326,8675919099212661,98664616.91,430289185,610量数売販
3,868327.60589.68332.882453.1981.801803783,06944,48617,6293,66123,7379,081567,966入収売販
5.027.331.222.910.916.933.77.225.328.2206.9150.521.242596.734.51,388.8別反付作更生ノ目標
 (昭和十六年)
1423605409608404263247.51.0222.61.441.031.22003.4422.3量収当反
7,1088.828016.848021,9849,1567,09810,91854.42586382,9791,55025.28502,45269432,0600量 収 総
0.544201441299201811.5422.4027.292116.5931.3730.60価  単
3,86819,65623.58708,79310,9876,3889,8261,0894,6467,36666,7424,230.95,34240,69221,796978,480入 収 粗
 -6,5529,81810,0004965,3248,19036194266497646438506142908,173量数用家自
7,1083.27607.030011,9848,6601,7742,72818643722,482904209I,838354312,427量数売販
3,868655.2913.90479.31,039.2159.66245.503681,1524,29255,59624,6204,38930,48211,104956,026入収売販
 - - - ― - -別反付作調査現況ト将来
 目標トノ比較
609016014070541.21.73.72.41.41.2125.73.30.38量収当反
1.63802.80803,6641,5261,1831,81994310649625840104081155.4260量 収 総
 - - - - - - - - ―価  単
3,2763.93101,4651,8311,0641,6371817741,22711,1237,0618906,7823,632163,080入 収 粗
 - - - - - - - - - - - ―量数用家自
1,63828,18010,6251,7931,1831,8199431064,960238404086512.6810量数売販
327.60329.22146.50125.20106.47163.701887741,2231,1106917286,7452,053388,060入収売販

表20(2)果樹・桑園養蚕生産目標
  
蚕        養樹           果
 晩
 秋
 蚕
 初
 秋
 蚕
 春
 蚕
 種
 目
 桑
 園
2,7241,5162,873量数立掃38.60.81,0774,8602301,511別反付作 昭 和 十 二 年
1,4077512,163量 繭 収2.5215.23.54.943量収当反
520430580価   単9.7200133,30023,75092045量 収 総
7,3163,22912,545入 収 粗0.8(石)22円0.250.300.25(石)22円価   単
   ―   ―   ―量数用家自7,7762865707,125230990入 収 粗
 1,407 751 2,163量数売販7,7769.13,4203,4759236量数用家自
1.94403.938021,2758289量数売販
7,3163,22912,545入収売販1,55566576,382.5207198入収売販
2,9961,8193,160量数立掃38.60.81,0774,8602301,511別反付作 更生ノ目標
 (昭和十六年)
1,5489762,596量 繭 収30218.24.25.84.83.6量収当反
520430580価   単11.664015.64,56028,5001,10454量 収 総
8,0504,19715,057入 収 粗0.082215302522価   単
   ―   ―   ―量数用家自9,3313436848,5502761,188入 収 粗
 1,548 976 2,596量数売販7,7769.13,4203,4759236量数用家自
 3.8880 6.5 1,140 25,025 1,012 18量数売販
 8,050 4,197 15,057入収売販
3,110143.0171.07,507253396入収売販
269303287量数立掃   ―   ―   ―   ―   ―別反付作  調査現況ト将来
 目標トノ比較
141225433量 繭 収5030.70.90.80.6量収当反
   ―   ―   ―価   単1.94402.68604,7501849量 収 総
7349682,512入 収 粗   ―   ―   ―   ―   ―価   単
   ―   ―   ―量数用家自1,5555.71141,42546198入 収 粗
 141 225 433量数売販   ―   ―   ―   ―   ―量数用家自
 1.9940 2.6 760 3,750 184 9量数売販
 734 968 2,512入収売販
1.5550771141,12546198入収売販

表20(3)養畜・山林生産目標
 林        山 畜          養
 竹
 材
 新
 炭
 材
 用
 材
 木
 炭
 鶏
 卵
 役
 牛
 種
 目
1,00022530021,00051397618,6756,94955量   数 昭 和 十 二 年
4151020270.852.560300価   単
4151,1253,0004,2001,38033815,4673,32716,500入 収 粗
    ―    ―    ―    ―    ―79123,735609    ―量数用家自
1,00022530021,000    ―318494,3405,55955量数売販
4151,1253,0004,200    ―27012,3943,33516,500入収売販
1,00022530021,000777941,051,74810,424110量   数 更生ノ目標
 (昭和十六年)
415100.20270.852.560300価   単
4151,1253,0004,2002,0797926,2696,25433,000入 収 粗
    ―    ―    ―    ―    ―685123,735609    ―量数用家自
1,00022530021,00077715928,0139,815110量数売販
4151,1253,0004,2002,07960823,2005,88933,000入収売販
    ―    ―    ―    ― 26 397 433,073 3,475 55量   数 調査現況ト将来
 目標トノ比較
    ―    ―    ―    ―    ―    ―    ―    ―    ―価   単
    ―    ―    ―    ―69933810,8022,92716,500入 収 粗
    ―    ―    ―    ―    ―    ―    ―    ―    ―量数用家自
    ―    ―    ―    ―26397433,0734,25655量数売販
    ―    ―    ―    ―69933810,8022,55416,500入収売販