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高根沢商業高校の設立

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 戦後の三大改革の一つに学制改革がある。教育の再建の基本方針として個人尊重の教育理念にたった民主的な教育体制の樹立が提案された。学校体制については教育の機会均等の理念により、六・三制が義務制、男女共学制とされ、それに続く三か年の高校教育がとり入れられた。一方では働きながら学ぶ定時制も発足した。各地に新しい教育への関心が高まるなか、北高根沢村には高校がなく氏家・鳥山・宇都宮への通学も親の負担は大きく進学できる者も限られていた。村当局は村民の要望をうけて昭和二四年(一九四九)二月の村議会において第三号議案で「高等学校の分校設置について」を提案した。その理由として「教育の機会均等を図るため学区制が実施される予定であるが、尚これが徹底を期し、本村教育のために高等学校の分校を設置したい考えである議決を求める」というのである。村ではすでに実施が予定されていた学区制をふまえて先行的行動にでたことは大いに注目すべきことである。
 こうして昭和二五年、北高根沢村は村の負担で県立矢板高等学校北高根沢分校を設立した。当初は昼間定時制の普通科で北高根沢中学校に併設されての第一歩であった。発足当時の一回生は普通科、翌二年目以降は農業科と家庭科という変則的なものであった。分校は北高根沢中学校の西端の木造平屋建校舎の一部六教室分を借用してはじまった。開校当時専任の先生は二名、あと四名は矢板高校、北高根沢中学校の先生が兼任の形であった。経営の大部分が村費で、町村合併後は町費によってまかなわれ、昭和二五年より四一年までの一七年間の地元の負担は表5の通りである。
 第一歩をふみだして間もない昭和二七年、二八年頃志望者数が激減し廃校への苦境に追いこまれた時代、役場、町内各小中学校の職員が三年間月給の一部をさいて寄附をし学校は苦境を脱している。この苦しみのなかの昭和三二年(一九五七)間借り生活から解放され現在の地に校舎が落成し、九月一日に移転した。独立校舎を得た所で、小林弘美村長は更なる発展を願い従来の農業科と家庭科のみのあり方を変えて、新たに商業課程を設けて施設設備を充実、職員組織の強化を図り、幅広く職業教育を行う定時制教育本来の形にして運営をしたいと県に陳情書を提出した。
 独立校舎の施設設備も一応ととのった昭和三六年一〇月、高根沢分校PTAは、当時県下の定時制高校が全日制への切換え運動を進めているのに歩調を合せ、小林弘美町長あてに一日も早い全日制実現の陳情書をおくっている。
 これらの運動に町当局も賛同し、昭和三九年に町では町長、議長、教育委員会の名で県に対し「栃木県立矢板高等学校高根沢分校を速かに県に移管の上、全日制独立校にせられたい」との請願書を提出した。さらに全町民の参加した署名運動もあって、三九年一〇月一日の県教育委員会で全日制普通高校昇格が認められ、翌四〇年二月二七日から開かれた県議会で正式に昇格が採決された。こうして矢板高校高根沢分校の入学式は、四月六日矢板の本校で行われ、競争率二・一四倍を突破した一二一名が入学し全日制高校として第一歩をふみだした。一年生は普通科、二年生農・家庭科五一名、三年同じく五三名、四年生四一名という変則的な構成であった。当時、矢板高校には塩谷分校、高根沢分校の二つの分校があり、二校は車の両輪にたとえられ、生徒会活動を通して生徒間の交流もあり「双輪」という生徒会誌を発刊していた。修学旅行なども両校が一緒で一〇〇名余りの生徒が宝積寺駅に集合して出発している。やがて高根沢分校は昭和四二年独立して栃木県立高根沢商業高等学校と改め県北唯一の商業高校として新たな出発を迎えた。

図13 新築された矢板高校北高根沢分校(昭和32年)(文挾 乾武提供)

表5 分校経営に対する町民の負担
北高根沢村負担高根沢町負担
             円
 昭和25年度     299,980
    26〃     350,310
    27〃     366,894
    28〃     320,526
    29〃     246,931
    30〃     294,708
    31〃     419,171
    32〃     799,711
              円
   33年度    1,714,000
   34〃      2,453,000
   35〃      3,549,000
   36〃      1,879,000
   37〃      2,270,000
   38〃      2,475,000
   39〃      5,020,000
   40〃      14,672,000
   41〃      16,751,000
   計      3,098,231  計       50,783,000

県立高根沢商業高等学校「創立10周年記念誌」