本町はすでに昭和六五年(一九九〇)を目標に、酪農戸数六五、乳牛二,〇〇〇頭、牛乳九,六〇〇トン生産の計画と梨畑六五ヘクタール、収穫量一,九二三トンの果樹団地形成の計画が進行していた。さらに、減反・転作が行われていたが、転作作物は表7で見るように麦と大豆、麦と飼料作物の輪作が中心で、ほかの麦跡の作物にはソバなどが作られていた。その他に野菜、花卉・花木などの栽培も行われていた。
高度成長の続くなか、若者の離村や後継者不在、出稼ぎなどで荒れる農地も増えていたが、その農地を引き受けて耕作したいと望む農民もいて、農協の会合などで受託(請負)耕作のことが話し合われていた。昭和四七年に「都市近郊農業育成対策事業」の指定をうけて結成されていた中阿久津農具共同利用組合や石末の宿、柳林、大谷東稲請負耕作組合が農協を通じて昭和四九年春から受託耕作を実施することになっていた。同じ時期に町では四八年の農振地域整備事業の一つとして自立志向農家の稲作組合の組織をつくり、農機具・施設の共同利用、農業経営と農作業の受託をすることを積極的に勧めていた。上高根沢の般若塚、宿、寺渡戸に稲作(請負)組合ができ、これらの組合も四九年春から委託をうけて農作業をはじめたので、同年春には経営受託一、四四〇アール、農作業受託二、三二六アールの水田が預託となっていた。契約は原則として三年、農協が間に入り利益配分額をきめている。
こうした状況もふまえて計画は、重点作目の選定、生産目標、集出荷販売の改善目標、営農類型の目標、農村生活環境の整備の方向など、これまでの「米の郷」高根沢にかわる新しい都市近郊農村の姿を模索している。この計画の概要は次のようである。
(一)重点作目
基幹作物・米(コシヒカリ主体の良質米産地、農業経営の基幹作物)
・麦(ビール麦、小麦、転作で基幹作物に定着)
・牛乳(転作で定着した作目、飼料自給、土作りと合わせた糞尿処理合理化の必要)
大豆(麦跡転作地の中心作物) トマト(転作振興作物)
春菊(主産地化を図る) シイタケ(通年労働が確保できる)
たばこ(主要畑作物) なし(県内有数の産地、品種更新終了)
肉牛(乳雄から繁殖和牛導入へ) 肉豚(大規模一貫経営、米と複合経営可)
(他に麦跡作物にナス、レタス、産地形成作物にニラ、ほうれん草、未成熟トウモロコシがあげられている)
(二)農業近代化の施設整備
集落単位に営農集団を組織して、トラクター、田植機、育苗施設、自脱型コンバイン、農機具格納庫、籾乾燥調整施設など共用機械類をそろえ、共同作業も取り入れて生産経費の削減と機械類への過剰投資を防ぎ生産性を高める。
営農集団の種類 稲作組合、麦作組合、協業組合、大豆組合、自給飼料組合など
(三)生産目標(表8)
(四)集荷・出荷・販売の改善点
米麦 生産組織の保有乾燥調整施設三一か所、大規模乾燥調整施設が必要。集出荷販売は農協取り扱い九二パーセント、商社八パーセント
野菜 販売農家一二〇戸、作目毎に農協の生産部会があり共販体制完備、集出荷所に予冷施設が必要
果樹 梨生産農家七六戸、平均四七アール栽培、農協の機械選果場利用、全量共選共販体制をとっている
牛乳 生産農家一〇〇戸、平均飼養頭数一八頭、二専門農協で全量個別集乳
肉牛豚 生産農家は肉用牛三〇戸、豚二〇戸、系統販売が主だが個別取引も相当ある見込み、販売体制整備が必要
(五)営農類型の目標(表9)
(六)生活環境整備の方向
・道路 四七年からの圃場整備と一体に幅員四・五~六・〇メートルで新設又は拡幅整備進行中、舗装と交通安全施設の整備に努める
・上水道 仁井田地区簡易水道のみで普及率四二・六二パーセント、桑窪、柏崎地区は水不足になっているので簡易水道敷設を進める
・下水道 普及率〇、水質汚染の恐れがあるので散居集落には沈殿濾過設備、集居集落には側溝に下水機能を持たせて集中処理する
・し尿処理 民間委託でし尿収集処理率四六パーセント、し尿浄化槽普及率一二・八パーセント、今後はし尿浄化槽の普及に努め放流水による水質汚濁を防ぐ
・ごみ収集 市街地は町で収集、農村部は自家処理、混住化傾向に対応して収集機能を拡大する
・幼稚園・保育所 町立、私立で収容希望は充たしている。今後は乳幼児保育整備が重要である
・諸施設の建設状況 農業者トレーニングセンター(五六年)、町民運動場(五四年)、集落センター(五三~五七年、八棟)
・生活改善活動 自治公民館、老人クラブ、青年団、生活改善クラブ主体
表7 転作実施状況と転作作物 (単位:ha)
年度 | 昭53 | 55 | 57 | 59 | 61 | 62 |
作物名等 | (見込み) | |||||
麦 | 206.1 | 342.0 | 465.9 | 280.6 | 214.8 | 165.7 |
大 豆 | 70.4 | 74.9 | 143.5 | 226.0 | 326.6 | 536.3 |
飼 料 | 164.7 | 209.8 | 182.4 | 144.1 | 108.8 | 133.1 |
ソ バ | 23.5 | 14.9 | 3.8 | 7.8 | 3.8 | 4.1 |
果 樹 | 1.1 | 0.3 | 1.4 | 2.5 | 3.7 | 3.4 |
桑 | 0.1 | 0.4 | 0.2 | 0.1 | - | - |
野 菜 等 | 49.6 | 86.0 | 71.0 | 66.4 | 77.1 | 65.2 |
豆類(大豆以外) | 3.8 | 7.0 | 3.2 | 1.5 | 1.8 | 5.6 |
た ば こ | 1.6 | 4.0 | 4.6 | 3.6 | 2.1 | 1.3 |
花き・花木 | 4.7 | 7.0 | 10.1 | 11.0 | 9.9 | 4.3 |
農業生産施設 | 3.2 | 7.0 | 5.8 | 0.6 | 0.8 | 1.2 |
産地形成作物(トマト) | - | - | 6.6 | 5.1 | 5.1 | 6.2 |
農協預託 | 10.2 | 49.9 | 52.7 | 8.7 | 18.5 | 39.7 |
土地改良通年施行 | 6.5 | 7.5 | 3.4 | 1.7 | 0.2 | 0.4 |
計 | 545.4 | 810.7 | 954.6 | 759.4 | 773.2 | 966.5 |
「高根沢町の農業」より
図2 整備された石末付近の耕地
図3 花岡に建てられた圃場整備完成記念碑(平成6年)
表8 農業生産目標
作 目 | 現 在 (55年) | 60 年 | 65 年 | ||||||
作付面積 (飼養頭 羽数) | 生産量 | 生産量 伸び率 | 作付面積 (飼養頭 羽数) | 生産量 | 生産量 伸び率 | 作付面積 (飼養頭 羽数) | 生産量 | 生産量 伸び率 | |
に わ と り | 16,700羽 | 280 | 100 | 16,700羽 | 290 | 104 | 16,700羽 | 290 | 104 |
合 計 | ― | ― | 100 | ― | ― | 140 | ― | ― | 184 |
表9 営農類型の現況と目標
営 農 類 型 | 現 況 | 目 標 | |||||||
平均経営 規模 | 戸数 (経営体数) | 目標規模 | 作目構成 | 戸数 (経営体数) | |||||
個 人 経 営 | 単 一 経 営 | 米・麦 | ha 4.5 | 戸 140 | ha ― | ha ― | 戸 ― | ||
果樹 | 1.2 | 1 | 1.3 | 梨 1.3 | 15 | ||||
酪農 | 2.5 | 1 | 4.0 | 乳 牛 50 頭 飼料作物 4.0 | 20 | ||||
複 合 経 営 | 米・麦+大豆 | 4.5 | 120 | 6.0 | 水 稲 4.5 麦 2.5 大 豆 1.0 | 160 | |||
米+やさい | 3.0 | 24 | 3.5 | 水 稲 2.6 や さ い 0.7 | 20 | ||||
露 地 やさい | + | 米・麦 | 3.0 | 20 | 5.0 | 水 稲 3.8 麦 2.0 や さ い 0.8 | 70 | ||
施 設 やさい | + | 米・麦 | 2.7 | 15 | 2.8 | 水 稲 2.0 麦 0.5 施 設 0.3 | 15 | ||
たばこ+米・麦 | 2.8 | 20 | 3.2 | 水 稲 1.5 麦 0.5 た ば こ 1.2 | 15 | ||||
梨+米・麦 | 2.6 | 30 | 2.8 | 水 稲 1.5 麦 0.5 梨 0.8 | 25 | ||||
米・麦+養蚕 | 4.0 | 5 | 5.5 | 水 稲 3.5 麦 2.0 桑 1.0 | 5 | ||||
個 人 経 営 | 複 合 経 営 | 酪農+米 | ha 3.5 | 戸 25 | ha 4.0 | 水 稲 1.5 飼料作物 2.5 乳 牛 30 頭 | 戸 30 | ||
肉用牛+米・麦 | 3.0 | 7 | 3.0 | 水 稲 2.3 麦 0.8 肉 用 牛 60 頭 | 20 | ||||
養豚+米・麦 | ha 3.0 | 戸 3 | ha 3.0 | 水 稲 2.3 麦 0.8 繁 殖 豚 22 頭 | 戸 5 | ||||
米・麦 | + | しいたけ | 3.5 | 14 | 4.5 | 水 稲 3.0 麦 1.5 ほ だ 木 15,000本 | 30 | ||
計 | 430 |
注1 専業農家の320戸と第1種兼業農家のうち中核農家とする220戸の半数を目標戸数とした。 2 目標所得は550万円とした。