一 本巻『高根沢町史 民俗編』(以下、本巻と略す)は、平成九年度から十三年度まで実施した民俗調査の成果を中心に、既存の報告書等を参照しまとめたものである。
一 本巻は、次の点に留意して記述した。
1 民俗事象は、伝統的な生活習慣が色濃く残された昭和二十年代から三十年代を中心に、それ以前、以降の変化に留意しつつ記述した。
2 本巻では、通史的書き方を基本としたが、本巻発刊のための調査報告書は刊行していないので、生の資料も適宜入れた。特に野仏については、全調査をまとめた一覧表を第五章資料編として記載した。
3 地域名については、原則として大字名で表記し、「仁井田」「台新田」などの行政区については民俗事象に応じて表記した。
4 第二次世界大戦前、中、後の表記は、「戦前」、「戦中」、「戦後」とした。
5 民俗語彙は原則として、初出はカタカナ表記(括弧内に漢字あるいは漢字かなまじり)、以降は漢字表記とした。なお、難解な語句にかんしてはルビを添えて表記した。
6 作物などの原料名(魚・野菜)や動植物名は、カタカナ表記とし、製品名は漢字(一般的に使われている漢字)またはひらがな表記とした。なお、一般的に漢字で表記されるものについては漢字で表記した。
7 人名は原則として伏せるかイニシャルにしたが、内容上必要であると判断したところでは、個人名や屋号などの実名を表記した。
8 度量衡の単位は、尺・貫・反・メートル・グラム・リットルなどを併用した。なお、一尺=約三十cm、一貫=三・七五kg、一反=約九九一・七㎡を換算とする。
9 年号の表記は、原則として和暦で示し、西暦は括弧内に表記した。なお、明治以降にかんしては、和暦のみ表記した。
10 引用文は、原則として原本に忠実に記述した。ただし、古文書などについては、読み下し文等にした。なお、既刊の『高根沢町史』からの引用等については、( )内に出典巻名と引用箇所の頁のみ注記した。
11 写真の表題は原則として、写真表題、地名(町域の場合は大字を、町外の場合は○○市[町・村]大字を表記)、撮影年次(本調査期間内の場合は割愛した)を表記した。ただし、古い写真で場所や年次が特定できないものはその限りではない。
12 稲作の写真に関しては、特に表記がない限り、昭和五十七年度に実施した『高根沢の稲作り写真集』にかかわる記録写真を使用した。
一 本文中には、今日の視点から見ると、不適切と思われる表現や身分差別などを示す名称や語句が用いられているが、それらは差別や差別意識を暗に容認するものではなく、民俗語彙としてとらえ、民俗的事実を明らかにするために用いたものである。したがって、地域の歴史や民俗的事実を曇りのない眼で見、いまなお社会に根強く残る差別と差別意識を解消するという観点で、本書を利用されることを望む。