種籾には粳米として早稲・中稲・晩稲とがあり、その他に糯と藁取り用のアカ糯がある。種籾は籾を傷つけないように、金ゴキか足踏脱穀機のスピードを遅くして脱穀し、よく乾燥させてから保存した。唐箕で選別したあと塩水の中に入れて、実入りの悪い浮いた籾を取り除く。塩水の濃度は鶏卵を入れて浮沈の具合を見て決める。つまり、浮いた卵の上面が一〇円玉くらいの大きさになる濃度が良いとされた。この塩水選による方法は陸苗代が作られるようになってからのやり方であった。また一斗入りのフゴザルやモミアライザルで川で洗い、浮いた籾を流して選別したところもあった。また、台新田などでは桶を使って選別したところも見られた。選別された籾は四斗樽か漬物桶などに入れて、一週間から一〇日間冷やし、水を取り替えながら、雨が入らない日の当たる軒下などに置いておいた。また、川に浸すところも多く、骨粉袋に入れて川や池で浸した。このあと種籾に酸素を十分吸わせ発芽を促進させるため、筵の上に広げて陰干しした。
なお、苗代に蒔いた残りの種籾は、ホーロク鍋で炒ってから臼で籾殻を取って、イリマイ(炒り米)としておやつに食べたものである。また、昭和六年頃貧しい農家では、炒り米を弁当にして学校へ持って行った子どももいたという。
図16 塩水づくり