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苗の植付け

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 子床への苗の植付けが済む四月中旬、苗を植え付けるための本圃の畝立てが始まる。
 植え付ける前に畝間の土をマンノウ(万能)で起こし、元肥を撒き平らにしておく。元肥は堆肥に菜種粕を発酵させて与えた。
 桜の花の咲く四月の中旬から五月の初旬になると、いよいよ本圃への植付けが始まる。その頃になると苗の葉も一五センチメートルほどに伸び、七~八枚くらいの葉が付くようになる。大麦との畝間は三尺あり、大きく育った大麦を両側に見ながら、その中央に植えて行くのである。なお、台新田などのたばこ栽培を主力で行う地域では、畑に葉たばこしか植え付けないところもあった。
 まず、ザラ板で作ったシルシボウ(印棒)で、一尺ごとに印を付けて行く。この印棒は各々の農家で工夫して作られ、印を付けるためにザラ板には十本程度の棒を釘で打ち付け、持つところを付けたもので、長さとしては三メートルほどになる。印棒で苗の植付ける場所が決まると、印を付けた場所に手で穴を掘りながら、一本ずつ丁寧に植えて行く。また、穴アケで穴を開けるところもあった。これは一般的には夫婦二人の仕事であるが、面積の多い農家では近所の人立ちを頼んでヨイドリで行われた。

図44 印棒(亀梨 鈴木家蔵)


図45 穴アケ(亀梨 鈴木家蔵)