六月下旬になると、たばこの葉の収穫作業が始まる。葉の摘み取りをタバコカキという。この時期は日中の暑さを避ける上からも、早朝から葉の摘み取りが行われる。まず取り始めるのが土葉で、これは一番地面に近いところの葉である。そこには、幼葉も下にあり黄ばんだ色の葉を取って行く。「若取りするといいたばこはできない」といい、土葉・幼葉とも黄色みがかったものを収穫した。葉の取り方は、手で一枚一枚葉の茎のところでねじるようにして葉を取って行く。取った葉は畝間に一〇枚程度ずつ重ねておいて置く。土葉取りは葉が茎の下のほうに付いており、這いつくばるようにして取るため、骨の折れる作業であった。その後、取った葉は菰に包み、カゴ(籠)に入れて家に運んだ。たばこの葉は一本の茎から二一~二三枚程の葉が取れるといわれるが、雨の多い年などは、地面に近い幼葉・土葉は葉がいたんで製品にならず、一八枚程度であったという。午前中に取った葉は、昼飯後にたばこ縄に挟む。その後土中・中葉・相中・本葉・天葉の順に取って行く。
土中取りは七月一〇日頃で、土葉の上の葉を取る。中葉取りは七月二〇日~二五日で、この中葉がたばこの葉の中で最も質の良い葉である。中葉を取る時には、一人の人が畝間に入り二畝分の葉を取りながら、地面に置いて行く。そして戻る時に置いておいた葉を拾い集めて畦に出す。また、後にはカマスや骨粉袋を抱えたり、ひもを付けて引いたりして、その上に葉を乗せてタバコカキをした。そして、相中取り・本葉取り・天葉取りと進み、お盆の八月一五日に合わせるように、葉の摘み取りを終了させた。
図47 タバコカキ(亀梨 古口光男氏提供、昭和28年頃)