摘んで来た葉は、その日のうちに納屋の庇の下などで、たばこ縄に挟む。つまり、葉の摘み取りとたばこ挟みはその日の内に行なわれ、朝七時頃から葉の摘み取りが始まり、昼頃には午前中の作業を終わらせる。家にて昼飯の後、午前中に取った葉をたばこ縄に挟みハッテに吊す。ハッテとは、たばこ縄を吊すための木の杭と竹で作られた木枠で、その場所をハッテバという。また、午後は日の照り返しが弱くなる午後三時頃から葉の摘み取りを再開し、手元が見える五時頃まで行なわれる。そして、家に戻って再び縄に挟み込む作業となる。葉は二間の長さのたばこ縄に一〇〇枚程度が下がり、これを一連といった。一〇〇枚というのは中葉で、土葉で八〇枚・天葉で一二〇枚が目安となる。たばこ縄の両側を玉に結び、棒の両側にあるメナワ(雌縄)にひっ掛けるようにして吊す。ハッテは、庭に間口二間・高さ六尺ほどの大きさのもので、長さは吊す数によって変わった。作り方は、杉丸太の杭を四方に打ち、竹を横に通す。そこにたばこの葉を挟んだ荒縄でできたたばこ縄を吊すのである。縄と縄の間は「葉の長さの分だけ開ける」といわれるように、だいたい一尺くらいであった。ただ、天気の良い日は太陽の熱で葉が焼けてしまうため、強い日差しが直接葉に当らないよう間隔を狭めたという。
ハッテバで一週間から一〇日乾かすが、夜はハッテの隅にたばこ縄を寄せて菰を掛けて夜露をしのいだ。また、雨の日には菰を二枚かけて雨水を防いだという。品質の悪い葉たばこを出さないため、当時の人たちは労力を惜しまず、気を配ったのである。なお、昭和三八年頃からは菰の代りにビニールが登場し、これを使用するようになった。また、一部の農家では普段外で干しておいて、雨などの時には、サッカケのある小屋などに入れられるオシコミサッテといわれる移動することのできるものもあった。
葉の乾燥は、上葉については葉が薄いため五日程度で済んだが、本葉は葉の肉が厚いため一〇日程度はかかったという。ちなみに天葉はヤニが多く、一方、中葉はたばことして吸っては美味しいという。
つぎに、仕上げ乾燥として、ジボシ(地干し)が行なわれた。地干しは、ハッテバの下に麦藁を敷いて、連干しにした葉を縄に付けたまま、麦藁の上に広げて干すのである。日中葉を裏返しにして全体を満遍なく乾かし、夕方湿気が来ないうちに雨屋に取り込む。これが、八月末~九月一〇日の作業となる。
ハッテバで半分ほど乾かすと、次に乾燥小屋で乾燥させる。時期としては九月一〇日頃~一〇日間ほどで、九月二〇日頃には最終となる。小屋の中には大谷石で築いた三尺角の炉がある。この炉に薪を燃やして葉を乾燥させたが、始めは低い温度で葉の水分を抜きながら黄変させて行き、徐々に温度を上げて行くようにした。
こうして乾燥させた葉は、いったん縄の付いたまま菰に包んで納屋にしまっておき、納付日に合わせて取り出され、最後にタバコノシをするのである。
図48 ハッテでの連干し