現在、樹木と樹木の間は、四間間隔で交互に植えられている。これは、現在植えられている幸水・豊水が大きく枝を伸ばす品種であるためで、親の代には、品種の樹勢が弱かったため、二間間隔の二間四ノ目で植えられていた。
苗木を植えて三年ほど経つと、枝が二・五~三メートルほど伸び、この頃になると棚アゲの時期となる。ただ、棚に這わせると伸びが遅くなるという。なお、棚の高さは作業する人の身長よりやや高いくらいが良いとされる。この高さは、剪定や収穫などの時に作業しやすい高さである。
以前は、木と木の間にアシグイと呼ばれる真竹を立てて、真竹を十文字に四〇~五〇センチメートル間隔に渡して棚を作った。竹は自分の家の山から切ってくるが、竹を切る時期は一霜降った後の竹が良いとされ、この頃の竹は乾いても割れないという。カゴやザルなどの竹細工に使用する竹もこの時期に伐採され、水を吸い上げなくなった竹が良いとされた。竹で作った棚は痛んだものを交換しながら毎年使い、竹を縛る縄は機械で撚った藁縄が使われた。
昭和三〇年代後半からは吊り棚で、梨の木の元にポールを立て、針金を放射状に張って吊り上げるようにした。このとき、棚の脇を支えるコンクリート柱は、鬼怒川から砂利を取ってきて鉄筋を入れて自分で作ったという。これにより、収穫期に枝が重くなっても棚が下がる心配はなくなったが、台風の時などは風により吊り下げた棚が揺れて、実が落ちることがあった。