六月に入りタマズグリが終わるそばから袋をかけて行く。これは雹害や虫害を防ぐとともに、病気予防を兼ね、また肌をきれいにするために袋をかけたのである。特に青梨で黒星病にかかりやすい「二十世紀」には効果的であった。赤梨用は宇都宮の袋屋から新聞紙や電話帳を袋紙にしたものを買って来て、家で菜種油とDDTを混ぜた油に浸して、それを乾燥して使った。油は紙を丈夫にするとともに虫の害を防ぐためのものであった。一方、青梨用の袋は針金の付いた蝋引きの菓子袋を長野県から取り寄せ、袋を二重にして使用した。
しかし、昭和三〇年後半から、糖度を出すために無袋となり、袋かけは行なわれなくなった。無袋梨が主流になると、袋をかけないと肌に黒星病が出やすい青梨の栽培は激減した。