商家の職種にもよるが、乾物や荒物を商う男たちは長着に股引、後にシャツにズボンを着用し、その上から前掛けをかけた。前掛けは屋号や会社名が染め抜かれたもので、ズボンの汚れを防ぐためばかりでなく、米や肥料など肩にかけて荷物を運ぶときに、腰ひもから前掛けを肩に回し掛けて上衣の汚れを防ぐためでもあった。
大工や屋根葺き、左官などの職人も印半纏を着用したが、家の上棟式の際、その家主から祝いに配られたものであった。印半纏の下には、紺地木綿のドンブリやハラガケ、下衣には紺股引、首には手ぬぐいを巻いた。手ぬぐいは汗を吸い取るほか、寒さを防ぐ襟巻きの代用にもなった。冬には筒袖の綿入れ半纏を着、足には黒や紺色の木綿足袋を履いた。
図4 商家の仕事着(大谷 阿久津次大氏提供)