現代より医療が進んでいない明治・大正時代には、人生の後半期を無事に過ごすことはむしろ稀なことであった。満六〇歳になることは生まれた干支にもどるという意味で還暦といい、老いへの節目として家族がお祝いをした。また七〇歳は古稀、七七歳を喜寿といい、シチボコといって、喜寿を迎えた人が火吹き竹をつくり、束にしたものに半紙、水引きをかけて神棚に供えた。これを親戚に配ることもあった。分けてもらった火吹き竹は神棚にあげておき、火事の時にこの火吹き竹で火に向けて吹くと類焼を逃れるといわれた。八八歳の米寿の祝いをハチボコ祝いといって、子や孫たちから、赤い頭巾に赤いちゃんちゃんこ、赤色や紫色の座布団が贈られ長寿を祝った。赤は魔除けの色であるという。