四月から六月頃は食べられる山野草がたくさん出る季節であった。タラの芽は天ぷらやお浸しにした。ノノヒロ(野蒜)は油炒めにしたり、和え物にしたりした。野蒜は生で食べると風邪の薬になったという。ゼンマイやワラビはアクが強いので、イロリの灰でアク抜きをして食べた。
夏から秋にかけて近辺の山にきのこをとりに行った。きのこは炒め物や味噌汁の出汁にした。チタケ(乳茸)は、ナスと油でよく炒め、うどんの出汁にした。茄子を一緒に煮ると毒消しになるといった。センボンシメジ〔和名:釈迦シメジ〕やイッポンシメジ〔和名:裏紅布袋シメジ〕は味噌汁に入れると出汁がよく出た。アイタケ〔和名:初茸〕は塩で茹でて食べた。ヤマドリ〔和名:栗茸〕は油炒めにした。