材料の基本は大根、人参、正月期間中に食べた塩引サケの頭、節分の時の残り豆、酒粕などで、いずれも残り物であるところに特色がある。最近では、見た目の悪さに敬遠する人もいるが、栄養バランスの取れた健康食品として高い評価を受けている。
調理は初午の前日に行う。年豆の残りを使うため、初午前には作らないものとされているが、どうしても食べたいときには年豆を入れずに作るとよいといわれる。正月に食べた塩引サケの頭を取っておいて使った。大鍋や釜でたくさん作ったほうが、味がよいという。三升炊きの鍋なら大根七、八本を使う。大根や人参はオニオロシであらくすりおろしておく。鍋に大豆、大根、人参を入れ、弱火で煮る。そこに塩引サケの頭を入れて骨が柔らかくなったら、酒粕を入れてよく煮る。サケの頭は鍋に入れる前によく洗って塩気を取り、茹でておくと臭みが残らない。大豆は節分の年越し豆を箕にのせて、マスの底でゴリゴリとしごいて殼を取って使う。道具のオニオロシはガリガリとすりおろすところからガリガリオロシとも呼ばれる。現在では商店などで簡単に手に入るが、以前は自家で作るか、大工に作ってもらった。
初午の日には、藁のツトッコにシモツカレと赤飯、または小豆飯を入れ、稲荷様や氏神様に供えた。シモツカレは互いに振舞い合う風習があり、「橋を渡らないで三軒のシモツカレを食べると風邪をひかない」とか、「橋を渡って七軒食べると中気にならない」などといった。
図27 初午のシモツカレ(寺渡戸 長宮稲荷神社)
図28 オニオロシ(大谷)