白菜漬けの仕込みは、一一月末頃、収穫が終わると行なう。一度に五〇個は漬けたという。白菜漬けには、収穫した白菜に包丁で根元の方に十字にスジを入れて丸ごと漬け込むマルヅケ(丸漬け)と、それをさらに縦に半分に裂いたものを漬け込む方法がある。半分に裂くときは根元にスジを入れ、手で割り裂く。包丁を使わないのは、葉を傷めたり、屑を出したりするのを防ぐためである。半分に割ると短期間で漬けることができるが、丸漬けのほうがより長持ちする。葉を広げて塩を振り、寝せて並べる。「白菜は踏み漬けがよい」といい、全体に塩を振ったあと、漬物用に用意した藁草履を履いて白菜をよく踏んだ。こうすることで柔らかくて美味しい漬物になるという。最初は小さい桶に入れ、しんなりと柔らかくなるまで踏み、大きい樽か桶に移し替える。樽が一杯になったら蓋をし、重石をのせる。大体四日から一週間程で水が上がってくる。これが漬けあがりの合図である。
たくわんの仕込みは、一一月末頃から暮れにかけて行なう。漬け込む前の準備として、収穫した大根を洗い、軒下などの雨のあたらない場所で乾燥させる。干すときは、大根の葉の部分を二本から四本ずつ藁で束ね、竿に振り分けて吊るしておいた。大根は、全体にシワがより、柔らかくなるまで干す。亀梨の農家では、乾燥の目安は、馬のカナグツ(金沓:蹄鉄のこと)の輪よりも、大根が細いことだったという。下柏崎や桑窪の農家では、大根が「の」の字に曲がるようになれば干しあがりだという。現在は干しあがった大根を八百屋で購入して漬けている家もある。漬ける量は、家によっても違うが、五〇本から一〇〇本、多い家では一〇〇本から二〇〇本も漬ける。漬け方は、葉を取った大根を樽の底に横にして一段敷き詰める。その上に生の糠と塩を混ぜたものを、大根を覆うように振り入れる。塩の量は、大根一〇〇本につき一升五合ほどで、塩の量が多いほど長持ちする。大根は井形に積み重ね、大根、糠と塩、大根、糠と塩の順に積んでいく。最後に大根の葉を敷き、ムシイタ(むし板)をおき、重石をのせた。漬物の重石はコウコイシ(香香石)と呼んだ。香香石は重い方がよい漬物ができるので、男手に運んでもらい、何個ものせた。香香石には二面が平らな丸石がよく、女の力で運ばねばならない場合は、小さい石をたくさん集めて袋に入れて使うこともあった。たくわんは正月元日にハツダシ(初出し)した家もあった。たくわん漬けには、練馬大根が適しているという。
たくわん漬けも白菜漬けも、一緒に辛み付けに唐辛子を入れたり、香り付けに柚子の皮やナスの葉を乾燥させて細かく揉んだものを入れたり、甘み付けに柿の皮を乾燥させて細かく揉んだものを入れたりと各家庭の味があった。白菜は春先まで、たくわんは田植え頃までは食べたという。酸味がでて味が変わってきたものは、刻んで水にさらし、よく塩出しをして油で炒めて食べると美味しかったという。