大根は千切り、輪切り、角切りなど用途に応じた形で乾燥させた。総称して切干大根といったり、千切り状のものを特に切干大根、切干などといったりもした。
ワンギリダイコン(輪切り大根)は、厚さ一センチメートルほどの輪切りにした大根の中央に穴をあけて藁を通して竿に吊るし乾燥させたもので、新聞紙に包んで保存し、タケノコや里芋やさつま揚げなどと一緒に煮物にした。桑窪では、砂糖醤油で煮付けた輪切り大根を田植えのときに必ず食べたという。せんつき大根はたくわん大根の屑をせん突きで突いてムシロの上で天日干ししたもので、煮物や汁の実にした。皮ひき大根は、皮むきで長く剥いたものを干したもので、剥いた大根に藁を通し、束にして軒下などに吊るして乾燥させた。皮ひき大根は二晩霜にあてると舌触りがなめらかになるという。皮ひき大根は、すぐに煮えるので便利であった。料理法は、汁の実や煮物、油炒めにした。角切り大根は一・五センチメートルほどの賽の目に切り、カゴやムシロの上で天日干ししたもので、納豆に混ぜ、二、三日たってから食べた。
また、大根は実だけではなく、葉も利用された。収穫したばかりの大根から取ったダイコンパ(大根葉)は、縄に吊るして乾燥させたものをヒバ(干葉)、湯がいて蔭干ししたものを、ユバ(湯葉)といった。どちらも汁の実にして食べた。干葉は馬の餌にもした。湯葉は入浴剤として風呂の湯に入れたりもした。