食事の膳は戦前には箱膳が用いられた。箱膳は箱と蓋からなるもので、普段はメシワン(飯碗)・汁椀・皿・ドンブリ・箸を箱に入れておき、食事の時に出して使用した。箱本体の上に箱の蓋を裏返して置き、食器を並べて食事をした。箱膳はお膳箱ともいった。箱膳は各人の占有で、普段は戸棚の中に重ねておき、食事の時に出して使った。食べ終わると茶や湯を注ぎ飲み、箱に戻した。食器は食事の度には洗わず、一日一回夜にまとめてヘチマたわしで水洗いをした。舅、姑、長男の分は嫁が洗い、他の者は自分で洗った。子供は箱膳を使い、大人になると平の膳を使うという家もあった。平の膳では、食べ終わると茶碗を伏せておいた。皿に惣菜が残っているときは捨てずに茶碗をかぶせて蓋をしておいた。柏崎の農家では、各自の食器を収納できる引き出しの付いた長テーブルを作り、台所の板の間で二列に並んで食事をしたという。戦後はチャブ台が普及した。チャブ台は、折りたたみのできる脚がついた低い食卓で、円形のものや四角形のものがある。使用しない時は、脚をたたんで部屋の隅に片付けておくことができた。チャブ台の普及によって、家族が円になって食事をするようになった。
図38 チャブ台(大谷)