生活の中心となる住居を母屋という。高根沢あたりの母屋の屋根は、伝統的には草葺き寄せ棟であり、草葺きの家をクズヤ(葛屋)と称している。葛屋は、瓦葺きやトタン葺きの屋根に比べ勾配がきつく、どっしりとした大きな屋根となるのが特色である。というのも葛屋の場合、瓦葺きやトタン葺きに比べ水はけが悪く、勾配をきつくすることによって水はけが良くなる。一方、屋根の勾配をきつくすれば、それだけどっしりとした大きな屋根となるのである。
ところで大きな屋根は、その分、屋根裏の空間が大きくなる。当町の農家では、この空間を屋根材の貯蔵場所にあてたり、荒縄に挟んだ葉煙草を幾重にも吊り下げ乾燥場などにしたものである。
図43 屋敷林にかこまれたクズヤ(葛屋)のたたずまい(太田)