イロリやカマドの燃料には、薪の他にソダッキとかモヤッキと呼ばれる枝木、あるいは麦藁や稲藁などが用いられた。薪はクヌギやナラが良質といわれ、栗は燃える際に火が跳ねたり火持ちが悪いのでクヌギ・ナラに比べると劣るといわれた。クヌギやナラなど薪の原料は、南那須町の喜連川丘陵や西部の台地から取得したもので、農家は、山林所有者よりヤマを買い自ら伐採し家まで運んだものである。ともあれ薪は、カネのかかる貴重なものであったので、農家では自給できる麦藁や稲藁、あるいはマキコリで併せて取得できるソダッキやモヤッキも燃料として用いた。したがって薪はイロリやカマドでの味噌炊き(豆を煮ること)など長時間燃やしつづける場合に用い、一方、ソダッキやモヤッキはイロリの焚きつけ、あるいは麦藁・稲藁とともにカマドでの飯炊きに用いた。
薪やソダッキ・モヤッキは木の葉が落ちている冬の間に取得し、一年間乾燥させてから用いたものである。
家に運び込んだ薪は、母屋の厩側の軒先や木小屋の軒先に積み重ね、一方、ソダッキやモヤッキは、屋敷林より取得したスギッパ(杉っ葉)とともに木小屋に入れて保管した。
火の焚きつけは、マッチをすり、それを杉っ葉などに移し、それからソダッキやモヤッキ、さらに薪へと次第に太い部材へと点火する。戦前は、マッチが貴重であり、かわりにツケギと称して松の木の削片の先に硫黄を塗ったものを点火材料として用いた。イロリの場合、大抵は火種を残しておき、この火種をもとに焚きつける。カマドの焚きつけは、イロリの火種をツケギやスギッパに移してから焚きつけた。