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建前

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 家の普請では、建前の際の贈答が目立つ。建前にはあらかじめ手伝いを依頼し、依頼されたイエでは祝い金を持参していったが、近い親戚では、祝い金の他にグシ餅やミカン、酒、ゴムマリ、五色の旗などを贈った。グシ餅とは小く丸めた餅で、式後に集まったムラ人めがけてまく餅である。グシ俵と称する特製の俵に入れて持参する習わしがあり、一つの俵にはもち米にして三升分程の量が入る。これを五俵程、多いイエでは七俵程持参する場合もある。ゴムマリは、よく弾むことにあやかり、イエが繁栄することを願って贈られるものである。昭和四〇年代以降はこうした物の他に、インスタントラーメンやタオル、軍手など多種多様なものを贈るようになった。
 建前の儀式が終了すると、建て主より振舞いがなされ、帰りには五色の旗や残ったグシ餅、あるいは引き出物などが渡された。

図33 「祝上棟野中家控帳」(中阿久津)