人々の暮らしの中では、さまざまな神や仏が信仰されてきた。人々はムラ(村)・ツボ(坪)・イエ(家)という集落や集団をつくって暮らしを立ててきた。村や坪といったそれぞれの集団ごとに、神仏を祭って災いを防ぎ、集落の安全を祈った。本章では、高根沢町の神社の信仰、講の集まり、寺の信仰、民間信仰について取り上げる。
神社の祭りでは、加茂神社のボンテン(梵天)祭りや石末・花岡・中阿久津の天祭が高根沢町を代表する祭りとなっている。天祭は昭和四〇年代に中断したことがあったが、近年になって復活したものもあり、祭りを保持してゆく新たな方法を見いだしつつある。一方、宝積寺駅や仁井田駅の開業によって、商店街がつくられると、新しい街には稲荷神社が祭られ、初午の稲荷祭りが行われている。それらの新しい街では、天祭や天王祭をもとにしながらも、神社の祭りから離れて新しい夏祭りをつくってきた。また、寺院の祭りでは、日蓮宗寺院の御会式、浄土真宗寺院の報恩講があり、地域の祭りとして定着している。
村の中の講の集まりでは、念仏講・庚申講・十九夜講・地蔵講があり、村の外へ参詣に行く講では三峰講・男体講・弘法大師講がある。念仏講ではさまざまな種類の念仏和讃が伝えられて念仏帳に記されている。村ごとの仏堂の縁日には念仏講の人々が集まって念仏を唱えており、念仏信仰が盛んである。