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家のウジガミの初午祭り

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 各家の屋敷のウジガミは、現在では木や石の祠ほこらになっているが、それ以前は藁で作られたワラホウデン(藁宝殿)であった。太田では、ワラホウゼンといって、藁を束ねて裾を広げて立てて屋根形にし、その中に幣束を立てた。昭和三〇年ごろ以降に石宮を建てる家が多くなったが、その傍らに旧来のワラホウゼンを作って祭っている。しかし、現在ではワラホウゼンを作る家は少なくなった。初午には、「正一位稲荷大明神」と書いた五色の旗をワラホウゼンの稲荷に飾り、一本の藁のツトッコに赤飯とシモツカレを入れたものを二本供える。太田の鎮守である津島神社の秋の例祭は一〇月一九日だが、それを前にして、秋に収穫した新しい藁でワラホウゼンを作り、一九日に神主に祓ってもらう。初午に供える藁のツトッコも稲刈り後に取り置いた新しい藁で作る。
 初午が早く来る年は、「初午が早いから火早い」といわれ、火事にならないように心配した。宇都宮の二荒山神社や氏家の今宮神社の祭りである一二月一五日と一月一五日のオタリヤ(冬渡夜・春渡夜)と同様に、初午の晩には風呂をわかさないとか、針仕事を行わないといわれた。初午の次の午の日である二の午には、初午と同様の行事を行い、これを初午のやり直しという。やり直しをよくやらないと火事になるといわれるが、現在では初午の翌日に二の午を取り越して行う家もある。初午には火伏せの信仰が結びついている。

図9 稲荷の初午祭りのワラホウデン(太田)


図10 稲荷に供えるシモツカレ(太田)


図11 ウジガミの初午祭り(中阿久津)


図12 初午の旗(太田)