宝積寺では一二月二三日に暮市が立ち、正月準備の人で賑わう。宝積寺駅前から東町の宿通りにかけて露店が出た。ゴボウ市ともいわれ、旧阿久津村の農家が土つきのゴボウやニンジンを売り、正月や冬の貯蔵用の野菜として買った。そのほか、正月飾り・瀬戸物・植木などの露店が出た。一月四日には花市が立ち、縁起物の造花やダルマを売る。暮市や花市のときは、西町の砥鹿神社の境内の市神で露天商の親分が市神祭りを行った。市神には、「宝積寺停車場前一同建之 世話人吉田留吉 加藤兼吉 石塚啓蔵 明治三十七年一月吉日」とある。明治三二年に宝積寺駅が開業し、商店街が形成されるときに駅前の人々によって市神が祭られていった。
図79 市神(宝積寺)