定専寺は宝積寺西町にあり、阿弥陀山と号し、浄土真宗本願寺派、本尊阿弥陀如来である。もともとは天台宗で、永観元年(九八三)に慈覚大師円仁が当地に巡錫し、阿弥陀如来画像を本尊とし、永観院定専坊と称した。その後、親鸞聖人が関東に巡錫し当地を訪れたときに浄土真宗に帰依した。親鸞聖人が当地を出発した日は承久三年(一二二一)一〇月一九日とされ、承久山河原寺とも称した。定専寺はもとは下宝積寺河原内の寺田にあり、礎石があった。享保八年(一七二三)八月一〇日の五十里洪水によって僧義真坊は河原内の人々とともに峰下に移り難を逃れて中興した。明治九年に本山の直末となり、明治時代末期の宝積寺駅前の街並み整備にともない、大正五年に現在地に移転した。旧暦一〇月一九日に報恩講を行ったが、現在は一一月一九日に行っている。寺宝には、永観元年に比叡山から勧請したという源信筆の阿弥陀如来画像、親鸞聖人六字名号、覚如筆阿弥陀如来御影がある。