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ススハライ

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 正月の準備は、一二月一三日のススハライ(すす払い)から始まる。昔の家はイロリやカマドを用い、薪や藁などを燃やしたのですすが立ち昇り、一年もたてば家中にすすがたまった。すす払いは、家の内外のすすを払うという現実的な大掃除としての意味合いとともに、もう一方では歳神様を迎えるために家の内外を清めるといった信仰的な意味合いがあって行ったものである。
 すす払いに用いる竹箒は、自家製のものを用いた。芯に用いる真竹は、農家ならばどこでも裏山に多少は風除けとしてあり、この裏山から取ったものであり、また、先に取りつける竹の枝も同じく裏山から取った真竹を用いた。一方、宝積寺駅前のような町場の家では、暮ともなると雑貨屋の店先に竹箒が並べられるのでそれらを購入してすす払いを行ったという。
 すす払いはまず、神棚に祭られているダイジンゴ様(大神宮様)から順に行い、大神宮様を下げたり上げたりする際には、直接持ったりせずにいったん箕の中に入れて行った。大神宮様の後は恵比須様、大黒様、さらには仏壇とすす払いをし、それらが終ると畳を上げ、最後には軒の天井にかかったくもの巣を取り除くなど隅から隅まで行った。
 なお、宝積寺駅前や仁井田など町場の商家では、来客のために一日かけてすす払いができないので、何日もかけて少しずつ家の中を整理し、暮れの二八日頃に、店を早じまいしてすす払いに取りかかった。
 すす払いで用いた竹箒は、農家でも商家でも裏庭に立てておいたり軒先などに立てかけておき、正月一四日のドンドン焼きに持っていって焼いた。