二月八日をコトヨウカとかダイマナコ、コトハジメなどといっている。この日は、一つ目の妖怪・厄神がやって来るといわれ、それらを追い払ったり、あるいは魔除け、疫病よけなどの儀礼が行われた。たとえばニンニクを焼き、これを串に刺して家の入口に突き刺したり、蕎麦がきを入口や雨戸の隙間に塗ったり、あるいは火をつけた線香の束を門口においたり、メカイ籠を反対にして竹さおにくくりつけて軒に掲げるといったことは、高根沢町でもよく行われたことである。また、蕎麦がきを食べると疫病、悪魔に取り付かれないとの伝承も聞かれる。なおダイマナコとは、軒に掲げるメカイ籠をいったものである。一つ目の妖怪・厄神は、大きな目(編み目)があるメカイ籠に驚いたり、目の数を数えきれずに逃げていってしまうという。
また、この日ササガミサマ(笹神様)、あるいはコト神様と称するものを祭る家もあった。笹神様とは、長さ一メートルほどの笹竹三本を前庭などに突き刺し、上の方を縛ったものをいう。この根元に小豆飯や赤飯を供えたり、笹の上に蕎麦がきを供えたりしたものである。大谷では田んぼの畦に作り、これをコト神様といった。
ところで、コトヨウカ、コトハジメのコトとは、神事のことである。旧暦二月八日は、初午と同じように農作業開始の頃であり、コトヨウカとかコトハジメといった言葉は、大切な神事を行う日をいったものと思われる。