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婿入り

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 婿入りは、婿が嫁の家に嫁を迎えに行くもので、御祝儀の日の午前中に行われた。婿は紋付袴で正装し、午前十時頃に仲人や親戚の伯父、伯母などと一緒に嫁の家に出かけたが、このときの人数は五人とか七人とか必ず奇数で行くものとされた。
 嫁の家に着くと、婿は玄関からではなく縁側から上がり座敷へと入った。座敷では嫁側の仲人、親族などがこれを迎えた。婿が着くとまず、両家の親族を紹介するオチカヅキのあいさつが行われた。このときお茶と巻きスルメのお茶菓子が二個ほど出されたが、スルメは紙に包んで持ち帰った。この引き合わせの儀式が終わると、婿は嫁側の親と親子の盃を交わし、親戚や近隣の人たちが集まる祝宴に出席した。祝宴の際には、床の間を背にして婿と嫁が並んで座り、二人の両脇に仲人が座って、その両端に近い親戚から順に座った。
 またこのとき、婿は嫁側の伯父に付き添われてムラマワリ(村廻り)も行った。これはナビロメ(名披露目)ともいい、嫁方の組内の家に半紙やハガキを持ってあいさつをしてまわった。こうした一連の婿入りの儀礼が終わると、嫁側の仲人、伯父伯母が付き添って嫁入りするが、家を出る前に嫁は家の仏壇の前で両親にあいさつをし、親子の別れの盃を交わし、仏壇に手を合わせて家を出た。
 なお、婿入りが嫁入りに先立って行われるのは、古い時代の婿入り婚の名残りと考えられる。