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嫁入り

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 花嫁の支度は、前日に髪結いさんが嫁の家に来て髪のクセ直しをしてくれ、当日の朝、花嫁の入浴がすむと、化粧、髪結い、着付けなどの支度をしてくれた。花嫁の支度は、髪は島田に結い、振袖や留袖を着たが、昭和三〇年代からは打ち掛けに変わっていった。特に振袖の場合はオダイジン(お大尽)の家しか用意できなかったので、髪結いの店で貸し衣装を借りる場合が多かった。花嫁の支度ができると、仲人や伯母につきそわれトテ馬車などを頼んで婚家まで出かけた。しかし、このトテ馬車も、車が普及する昭和四〇年代くらいになるとタクシーにかわっていったという。
 嫁が婚家に到着して家にあがる前には、チョウチントッカエという儀式が行われた。これは縁側に花ゴザを敷き、その縁先で仲人立ち会いのもと、正装した五歳くらいの男の子と女の子がそれぞれの家の家紋がついた弓張り提灯を持って向かい合い、その提灯を互いに三回交換するものである。嫁はこの二人の間を通って、婚家の縁側から座敷へと上がった。
 座敷に上がると、まず嫁はオチツキモチを食べた。オチツキモチというのは、吸い物の中に餅が二、三個入っている物で、家によっては汁粉の場合もあり、組内の人に手伝ってもらって用意したり、仕出屋に頼んで持ってきてもらうこともあった。オチツキモチはその名のとおり、嫁がその家に落ち着くという意味合いが込められているといわれ、三三九度の盃ごとが終わってからオチツキモチを食べるという場合もあった。

図9 花嫁の髪結い道具(町教育委員会蔵)