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出棺

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 僧侶は葬式に呼ばれると当家の縁側から上がり、祭壇の前に座って読経をあげた。僧侶の人数は一人頼むのが普通だったが、家によっては二、三人頼む家もあった。僧侶の後ろには、故人と血のつながりの濃い順から座り、その後ろにその他の親戚知人が座った。読経の間に座順のとおりに焼香が終ると、親族は故人とお別れをして棺桶のフタをしめ、そのフタを石を使って釘を打ちつけた。このとき使用する石は、当家の庭の石をきれいに洗ったものである。
 野辺送りのため棺を家から外に出すときは、玄関からではなく棺が置いてあった座敷から縁側、そして庭へと運びだした。棺を出して葬式の人がいなくなった座敷では、クサトリカゴやメカイカゴなどの大きさのよい籠を使って、部屋の隅から隅まで四方へ転がすカゴコロガシを行った。このとき籠は、箒で転がすというところもある。転がした籠は、最後には必ず外へ掃き出すように外に向かって転がしたり、実際に外へ転がして落とすこともあった。カゴコロガシをするのは組の女性、あるいは男性というところもある。

図12 カゴコロガシ(石末)