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葬送に関する俗信

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 葬送に関する俗信については、死によって生じるケガレが他の人たちや、日常生活におよぶことを恐れ、それを避けるための禁忌が実に数多く伝承されている。その禁忌の多くは葬式で行われる特殊な行為を日常生活で行うことを忌むものと、葬式で使用した生活用具を一定期間が過ぎるまでは使用してはならないというものの大きく二つに分けることができる。
 前者の例では、
 
・餅と団子を一緒に作るのは葬式くらいなので、普段の日にこの二つを一度に作ってはいけない。
・死装束を作るときには、一つの布を何人もで引っ張り合いながら縫ったので、普段の日に一つのものを何人もで縫ってはいけない。
・四十九日餅は北に向けて置いた箕の上に並べるので、農作業のときも、箕は北を向いて使ってはいけないとうるさくいわれた。
・入棺が終わると、一つの餅を親族たちが引っ張り合いながら食べるので、普段の日に一個の餅を何人もで引っ張り合いながら食べてはいけない。
・入棺のときに使う湯は、水に沸かした湯を入れながらうめるので、普段の日に水の中に湯を入れてうめてはいけない。
 
 後者の例では、枕ダンゴを茹でた鍋、死装束を縫うのに使ったはさみや針、入棺に使った盥など、「仏さんに使ったものは一週間は使えない」といって、死者に触れたものや関連したものはそのケガレがついたものとされ、すぐには日常生活に使用しなかった。
他に、前記の禁忌とは全く反対に、葬儀で使用したものを縁起物とする伝承もある。
 
・葬列に使った麻を持ちかえって妊婦の髪をしばるとよい。
・前の絅を持って帰って妊婦の腹帯にすると安産する。
 
 また、死者に関して次のような俗信も聞くことができた。
 
・亡くなった人の背中に墨で名前などを書くと、二世代後の子がうまれた時に、あざができた子ができる。
・亡くなった人に死化粧をすると、次の代の子どもにあざができるといい、昭和一〇年代頃までは死化粧はやらなかった。
(山田淳子)