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〔民俗芸能〕

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 民俗芸能とは、民間の生活の中で伝承され寺社の祭礼などのさいに地元の人々が演じる芸能のことで、郷土芸能あるいは伝統芸能ともいわれる。
 高根沢町内の民俗芸能には、神楽やお囃子、雅楽などがあり、明治初期頃までは人形芝居も行われていた。また村芝居用の舞台回しの舞台連は昭和三〇年代まで行われていた。さらに、民謡といわれるさまざまな歌が歌い継がれており、これには苗取り歌や田植歌などの仕事歌や、手まり歌・羽つき歌・お手玉歌などの童歌、その中間的存在ともいえる子守歌などがある。現在はほとんど聞くことがなくなってしまったが、ただし盆踊り歌だけは変化しながらも現在でも盛大に続けられている。
 こうした高根沢町の民俗芸能の中で特筆すべきはお囃子である。夏の天王祭で演奏される屋台囃子は豪華な彫刻屋台や山車にも引けを取らない。また天祭の時に行われる天祭囃子、最近では日蓮宗の寺院でのお会式囃子も盛んであり、太々神楽の神楽囃子ともどもこれらのお囃子は高根沢町内の一六ヶ所で伝えられ町の代表的な芸能である。
 中阿久津では、天満宮の大祭に江戸時代末期より芝居を奉納するのが伝統的風習である。舞台は地元の若者たちが中心となり作った。仮設組立式のものでその上で芝居一座に依頼して上演してもらうものである。平成一二年三月にはその伝統を受け継ぎ、後世に残す目的で新しい公民館が建設され舞台が特設された。これは歌舞伎芝居などの古典芸能が披露できるステージ用の板の間と、屋根付き観客席用の広場があり、村芝居の雰囲気を残した伝習館で同時にコミュニティセンターとして今後のムラづくりの核となるにふさわしい画期的な公民館となり、落成式には地区の人達が三番叟を習ってこけら落しの初舞台を踏んだものである。
 七月末の日曜日にスーパーの駐車場で行われる夏祭りは、宝積寺の東町南区・中区・北区・天神坂の四地区の屋台が勢ぞろいしてブッツケ(打つけ)が行われる。炎天下の真昼のお囃子の競演で最大限に盛り上がり、数年前から始められたもので民俗芸能の今後の形の一つとして注目される。
 以下、高根沢町内の民俗芸能について紹介したい。なお、上演の期日と場所については、調査した平成一〇年前後のことを中心に述べたものである。