高根沢町伏久には人形芝居のほかに芝居の舞台回しを行う舞台連が昭和三七年まであった。舞台回しとは芝居を上演する時の仕掛け舞台用の諸用具一式を備えて置いて、芝居をブツ(打つ、上演興行すること)地区の人から頼まれた時にその土地に出向き舞台の組み上げや、さらに上演中の舞台の運用一切を取り仕切ることでこれを舞台回しといい、それを行う団体を舞台連といった。この時、単に舞台用の道具を貸し出すケースもあった。
その年の農作物の収穫が終る秋には各地では盛大に祭りが行われ、収穫の感謝と来る年も豊作であるように祈りながら心身の労をいたわりリフレッシュする。この時期の最大の楽しみが芝居であった。地方を巡業して歩くドサ回りの歌舞伎一座を東京芝居などといい、その人達を一、二夜買い上げて地元の人は勿論のこと近郷近在の親戚や知人を呼び招いて皆で楽しんだのである。各地で芝居を楽しむ風潮が盛り上がると、伏久の舞台連もほうぼうからお呼びの声が掛かりそれらの要望に応えた。