両親を幼くして亡くした「おすず」という女の子が祖父の「作造」と慎ましく暮らしていた。やがて、おすずも美しい娘に成長し、「善之介」という若侍と許婚になった。しかしどうしたことか、善之介が突然の病で急死してしまい、あまりの悲しみにおすずは両親の位牌を胸に抱いて渕に身を投げてしまった。たった一人の身寄りを失った作造もまたおすずの後を追って渕に身を沈めた。人々は幸せ薄い二人を弔って渕の近くに塚を建て「姫塚」と名付けた。その塚に近づいたり塚に手を触れると祟りがあると恐れられている。
(『高根沢町の伝説集』)
図2 孫娘の苦しみを今に伝える扇渕と渕のほとりに建つほこら(平田 井沼川)
図3 孫娘の苦しみを今に伝える扇渕と渕のほとりに建つほこら(平田 井沼川)