石は、その堅固さや永遠性から古来より、神仏の姿に託されて各時代のさまざまな伝承に彩られてきた。
貴人が腰掛けた石なので「腰掛け石」と言ったとか、貴人の乗った馬が蹄で傷を付けたので「馬蹄石」と呼んだという石が残されていたり、汗をかいたり夜通し泣いたりするので不思議に思った村人がその石を祀ったところ、たいへんなご利益があったと言う伝説など、国内には石にまつわる伝承が数多く残されている。
ところが、度重なる鬼怒川の氾濫は大石さへも流し去ってしまうのか、高根沢町には石にまつわる伝説がほとんど残されていない。たとえば宝積寺には、近付くとケチがつくといわれる場所から大きな石が出てきて、そこが並塚の由来になったという地名伝説の他、以下で紹介する伝説が確認されただけである。