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〔雨っぷり地蔵様〕

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   昔は、何日も日照りが続くと田んぼや畑の作物が大きな被害を受けた。宝積寺あたりでは、畑の作物の被害が大きく、サトイモ(里芋)や大豆、オカボ(陸稲)に「日が通る」と言って、日照りを恐れたものである。
   夏になって何日も雨が降らず日照りになると、御幸坂下にあるお地蔵様を誰にも見つからないように抱いて川に入り「どうぞ○○日までに雨を降らせてください」と祈る。すると、不思議とその通りになったので、いつしか「雨っぷり地蔵様」と呼ばれるようになった。
   旧暦の一月二四日と七月二四日が縁日で、近郷近在から参詣者が集まりたいそうな賑わいを見せた。
(『子どもが書いた ふるさとの伝説集』・菊地重雄・野中祥司)

 
 雨乞いの儀礼は本来、農耕信仰の世界に属するものであるが、仏様も一役買うところが何とも微笑ましい。
 田植えが終わらず悩んでいた信心深い百姓が、朝田んぼに行ってみるとすっかり苗が植えられていた。びっくりしていつもお参りしていたお地蔵さんを見たところ、そのお地蔵さんの足が泥で真っ黒だったという昔話が各地にある。
 お地蔵様を信心している者の苦しみを取り除いたりその苦しみの身代わりになったり、庶民が愛した神仏はあらゆる力を発揮する存在でもあった。