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序章 たからづか
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紅・藍・緑・白の色とりどりに、金糸・銀糸の織りなす花鳥・山水。目にもあざやかな色模様。その豪華絢爛(けんらん)たる西陣織の大緞帳(だいどんちょう)が、まさにあがろうとしている。前奏をかなでるオーケストラが緩徐な調子となって幕開きに備えれば、照明もそれに応じる如く光りを絞って、まばゆい緞帳を青と紫の霞のなかに包みこんでしまう。そして強い光が、やがて現われるであろう舞台正面の一点に集中するとき、人びとの期待のなかに静かに静かに幕があがってゆく。歌劇「たからづか」幕開きの一瞬である。