大地の歴史

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さて、自然の歴史は遠く日本列島の成因から説き起こし、近畿全般の基盤構造に及び、時代を追って形成される岩石や地層群にくわしくふれ、まず山地部の構造が明らかにされると、つぎは平野部のそれに及んでゆく。ここでは瀬戸内海の拡大や縮小、すなわち日本列島の浮き沈みという地殻変動のなかで、しだいに厚く堆積してゆく被覆層(われわれの生活に直接関係する地層)を取りあげる。そして最後に、現在宅地化の進む段丘や、平野の成立を、世界的気候変化と、それによって生じた海水面の上昇・沈降と関連づけながら述べてゆく。
 さきに宇宙衛星から眺めた宝塚が、近畿の一大地質構造線(有馬―高槻構造線)上に位置することを述べたが、これはいったいどういう結果をもたらしているのであろうか。これに関して「動く大地」の問題を展開させる。硬いようにみえて柔軟性をもつ地殻、そこに働く圧力、すこしずつの運動であっても、つもりつもって六甲山まで築きあげる莫大(ばくだい)なエネルギー、それにともなって起こる断層・地震、その結果生じた直線状の割れ目、その一つ一つが実は地形の複雑さの原因なのである。
 宝塚のシンボルが歌劇と温泉にあることは誰も異存はない。したがって温泉に焦点をあててみることにする。その発見の歴史から、泉質・泉温の問題がくわしく取りあげられ、宝塚温泉が浮きぼりにされる。そして自然編の最後を飾って、過去から現在にいたる植物群の変遷が気候との関連でくわしく展開され、つづく「自然の恩恵と災害」の項で環境としての宝塚の自然の利害得失に関する総決算をする。これでわれわれは宝塚についてのいちおうの自然環境理解をすませ、いよいよ人間登場の歴史を繙(ひもと)くことになる。