丹波層群

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丹波帯の古生層は、砂岩・泥岩(でいがん)を主とし、チャートや輝緑凝灰岩をはさみ、他の地域の古生層と比べると、石灰岩の少ないのが特徴である。
 市域の古生層は、武田尾東方の僧川が武庫川に合流する付近などごく狭い範囲に露出するにすぎない。しかしながら、北摂山地に広く分布する流紋岩の下に伏在していて、猪名川流域の古生層に連続していることは確実である。
 猪名川流域の古生層は、泥岩を主とする丹波層群下部と、砂岩の多い丹波層群上部に区分されている。そして川西市山下付近を東西に走る向斜軸に沿って上部層が、川西市の国崎付近以北と赤松―平野以南に下部層が分布している。市域の武田尾東方のものは、丹波層群下部に属するものと推定される。
 丹波層群下部には、泥岩のほかに、チャートと輝緑凝灰岩をはさむ。チャートは珪酸(けいさん)質の硬い岩石で、丹波珪石の原料となり、山頂あるいは山腹に急崖となって露出する場合が多い。輝緑凝灰岩は、暗緑色を帯びた細粒緻密な岩石で、塩基性の火山砕屑(さいせつ)岩起源のものをいうが、熔岩起源のものも少なくない。このような岩石の存在は、本州地向斜のなかで、海底火山活動のあったことをしめすものである。
 丹波帯の古生層には、化石を含む石灰岩が極めて少ない。しかし宝塚市に近接する多田神社西方の輝緑凝灰岩中に石灰岩のレンズがあり、そのなかからシュワゲリナという紡錘虫の一種がみつけられ、また最近では、裏六甲を西へ流れる山田川の呑吐(とんど)ダム調査中に、チャート中の石灰岩レンズから、シュウドフズリナ・トリシイテス・フズリネラなどの紡錘虫やサンゴの化石が発見された。これらの化石は、古生代の石炭紀・ペルム紀を指示するものである。

写真4 石灰岩中に含まれている紡錘虫の化石 顕微鏡写真


 山下向斜の存在でもわかるように、古生層は褶曲構造をもち、向斜軸の北側の部分は南に傾斜し、南側のものは北へ傾斜している。これこそ本州変動の具体的な表現といえる。
 つぎに述べる後期中生代の流紋岩類が、これらの褶曲構造を切って、緩傾斜で古生層をおおっていることからみると、古生層は褶曲後長い浸食ののちに平坦化し、そこへ火山活動が起こったと考えられる。
 猪名川流域の古生層と流紋岩類との不整合関係は、猪名川町銀山から、宝塚市切畑東方を経て、川西市若宮に至る北摂山地の山腹に沿って追跡できる。