六甲山地を構成する花こう岩類は、布引花こう閃緑岩・土橋石英閃緑岩・六甲花こう岩に区分されているが、布引花こう閃緑岩は六甲山地南縁に、また土橋石英閃緑岩は西六甲山頂付近で捕獲岩体としてわずかに露出するにすぎず、六甲山地の大部分は六甲花こう岩でできている。宝塚市域西南部の山地を構成するのも六甲花こう岩である。
六甲花こう岩は、優白色の石地に黒雲母が散在し、淡紅色の長石が混じって、研磨効果がすこぶるよく、石材「本みかげ」として著名なものである。石切山花こう閃緑岩のように岩相変化はなく、岩体周辺部に細粒のものがみられるほかは、中粒(粒径一ミリメートル~三ミリメートル)ないし粗粒(粒径三ミリメートル以上)の分布が広い。
顕微鏡でみると、石英・正長石・斜長石の順に多く、数パーセントの黒雲母をともなう岩石である。六甲花こう岩の化学分析値は珪酸(SiO2)が七五%前後あり、中央深成岩群のそれと比べてより酸性である。また六甲花こう岩の黒雲母を試料とする絶対年代測定結果は、ルビジウム―ストロンチウム法で八七〇〇万年、カリウム―アルゴン法で七五〇〇万年の値が出ており、後期中生代の燕山運動の時期に一致している。
六甲花こう岩のこれまでに述べた特徴は、山陽側に分布する広島花こう岩体のものと類似点が多く、広島花こう岩に対比している。流紋岩類との関係は、市域では有馬―高槻構造線で接するため、その前後関係が明らかでないが、有馬温泉南の射場山・逢ケ山などで有馬層群が六甲花こう岩に貫かれる露頭がみつけられている。
石切山花こう閃緑岩との関係は、分布地域が異なるためわからないが、中国地方では、中央深成岩類を貫く広島花こう岩体周縁相が報告されており、広島花こう岩に対比される六甲花こう岩が、より新期のものと考えられる。
宝塚市域に露出する花こう岩類はいずれも、かつて中国バソリスとして一括されていたものである。
西南日本の花こう岩類の一方の旗頭である領家帯の花こう岩類としては、この付近では六甲山地南縁に分布する布引花こう閃緑岩があげられ、淡路島北半部や、生駒山地を形成している。大阪の上町台地でおこなわれた深層ボーリング OD―2号では、深度六五六メートルで、基盤の閃緑岩に達しており、その岩質から領家帯のものと判断される。このように周辺の状況から考えると、武庫平野の被覆層の基盤には、領家帯の花こう岩類が伏在する可能性が濃厚である。