第一瀬戸内海

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生いたちのはじまりから古第三紀までの長い地質時代を、大陸縁辺部として性格づけられてきた日本列島は、新第三紀の中新世にはじまる地殻変動で大陸と分離し、島弧としての第一歩を踏みだした。
 グリン・タフ(緑色凝灰岩)で特徴づけられているこの変動は、東北日本から西南日本の日本海側を舞台とし、海底火山活動に由来する厚い火山岩層と、これに引きつづいて堆積した黒色泥岩などの砕屑岩の、厚さ数千メートルに達する地層をつくった。
 このころ、西南日本の大半は基盤岩類が広く露出する陸域となっていたが、領家帯の部分が沈降をはじめ、東西に細ながく延びる浅い水域を生じた。これが第一瀬戸内海である。この海には島が散在し、今の瀬戸内海に似た景観を呈していたと考えられる。
 沈降をつづける地向斜の海とちがって、この内海では、陸地から運ばれた土砂は、局部的にたまり、小さな堆積盆地がはなればなれに数おおくできた。基盤の動きを反映して、堆積盆地中心が移動するため、そこには厚い地層はできず、岩相変化のいちじるしい地層群が生成した。この地層群を第一瀬戸内累層群と総称している。現在、この地層群の分布は西南日本中軸部に散在しており、分布地域の地名をとり瑞浪(みずなみ)(岐阜県)・一志(三重県)・藤原(奈良県)・神戸(兵庫県)・津山(岡山県)層群などの地層名でよばれているが、今はもう絶滅したビィカリアなどの巻貝のほか多数の貝の化石や有孔虫の化石を含み、それらの生態から推定すると、当時熱帯ないし亜熱帯的な気候であったことがうかがわれる。

図6 瀬戸内新生代層の分布