第一瀬戸内海はやがて淡水化し、一五〇〇万年前ころには淡水湖列となっていた。この水域付近で瀬戸内火山系の活動がみられる。流紋岩に始まり、黒雲母安山岩・角閃石安山岩とつづいて、輝石安山岩・サヌカイトで終わる一連の火山活動である。
近畿地方では、大和川のほとりの二上山にこの活動が集約されているが、宝塚付近では、初期の流紋岩と、末期の火山活動のなごりがみられるだけである。すなわち神戸層群の凝灰岩は流紋岩質の火砕岩であって、瀬戸内火山活動の始まりを告げるものであり、東六甲に特異な姿をみせる甲山は、末期のサヌカイトでできている。
サヌカイトの名は、四国讃岐(さぬき)地方に産する、俗称「カンカン石」といわれる黒色無斑晶緻密な斜方輝石安山岩に対してつけられた名称であるが、その後、瀬戸内地域の二、三の亜種を含めてサヌカイト類と総称し、瀬戸内火山系の代表的な岩石とされている。
瀬戸内海周辺地域では、先史時代の遺物として、サヌカイトを原石とする黒い石器が出ているが、これから先史人が、サヌカイトの割れ口が鋭い貝殻状断口をしめす性質を知り、原石を選別して石鏃(せきぞく)・石槍などに巧みに利用していたことがわかる。