大阪層群は千里丘陵で、最初にくわしく調査された。ここでは、神戸層群を不整合におおって、厚さ一〇〇メートルほどの淡水成の地層があり、それにつづいて、くりかえし海成粘土層と砂礫層があらわれる。これらの海成粘土層は、下から、第一海成粘土層(Ma1)、第二海成粘土層(Ma2)というようによばれているが、第三海成粘土層中に「アズキ凝灰岩」とよばれる、特徴ある、厚さ三〇センチメートルの砂質凝灰岩をはさんでおり、これを境に大阪層群を上・下に二分している。第一海成粘土層のまうえには「ピンク凝灰岩」とよばれる、淡紅色の色調をもった凝灰岩があり、これも鍵層としての役割を果たしている。
宝塚付近では、六甲山地東縁のものがくわしく調べられており、分布も広いが、そのおもな分布地は西宮市域となる。この地の大阪層群は、甲陽園・香櫨園(こうろえん)・満池谷の三累層に区分されている。甲陽園累層は基盤をおおう礫層であり、連続性の悪い淡水成粘土層や砂層をはさみ、ピンク凝灰岩を上限とする地層である。香櫨園累層は、数枚の海成粘土層をはさむ砂・礫の互層で、下位から三枚目の海成粘土層(Ma3)のなかに、大阪層群を上下に二分するアズキ凝灰岩がある。
満池谷累層は、模式地西宮市満池谷で下位の地層を削りこみながら堆積した砂礫層で、このなかの粘土層は、グイマツ・イラモミ・シラカンバなどの寒冷気候をしめす植物遺体を豊富に含んでおり、日本における氷期の指示層として全国に知られている。砂礫層の構成物質は、甲陽園・香櫨園累層では、チャートなど古生層起源のものが多いのに対し、満池谷累層では、流紋岩類や花こう岩類の礫がめだち、満池谷累層堆積時から、北摂山地や六甲山地の上昇が早くなってきたという環境変化を物語っている。
宝塚市域内では、仁川(にがわ)・逆瀬川(さかせがわ)上流部の甲山周縁地域にかなり広く大阪層群が分布している。五ケ池の周辺には、海成粘土層が露出し、海成貝化石の印象もときには発見されるが、これは香櫨園累層の最下部にあたる第一海成粘土層にあたるとみられる。
その下には基盤の花こう岩のくぼみを埋めるようなかたちで、砂礫層が分布している。西宮ゴルフ場内を流れる仁川の川床には、植物遺体の密集しているところがあり、それらはメタセコイア・オオバタグルミ・オオバラモミなど、大阪層群下部を指示する「メタセコイア植物群」に属することが明らかにされている。
北摂山地の大阪層群は、その南縁に沿って、尾根筋や斜面にへばりつく形で分布している。清荒神東の尾根や、長尾小学校裏の切土斜面で観察すると、小石大のチャート礫を多数含む礫層が主体で、ときにシルト・砂層などをはさんでいる。岩相と地質構造からみて大阪層群下部のものと考えられる。このほか北摂山地の山間低地である大原野・切畑などにも、厚さ数メートルの砂礫層があり、崖錐堆積物などとは明らかに区別され、大阪層群相当層と判断しているが、その層準は明らかでない。
段丘堆積物と沖積層が地表をおおう武庫平野では、全域にわたって大阪層群が伏在することは、ボーリング資料などからみて確実である。またこの地域の大阪層群は地層の発達もよく、厚いところでは数百メートルの厚さに達するものと推定されている。