それでは、若狭湾―播磨灘を結ぶ沈降部と、丹波山地と六甲を結ぶ隆起部は、なぜできたのだろうか。もう少し視野をひろげてみると、このような高低部はここだけではなく、まるで波のうねりのように西南日本にひろがっていることがわかる。すなわち、飛騨の高山盆地や、琵琶湖のある近江盆地は沈降部、それらをかこむ飛騨や美濃の山地、丹波の山地は隆起部にあたる。瀬戸内も同様であって、淡路島・生駒山地・鈴鹿山地などは隆起部を、大阪盆地・奈良盆地・伊勢湾などは、沈降部をあらわしているものとみられる。すなわち、南北に軸をもつ波のうねりに似たゆるやかな起伏こそ、近畿のみならず、日本列島の自然のわくぐみをつくった最も新しい地殻変動の象徴ともいえそうである。そして近畿の大きな川は、この波のあいまを縫い、あるいは波を乗りきって、流路変遷をしながら今日にいたったのであろう。