このように複雑な海進・海退と、山地の上昇運動のなかで段丘は形成されてきたのであるが、山地の動きが六甲山地と長尾山地との間で同じでなかったことは、武庫川をはさむ両山地の高位段丘や中位段丘の高度差にはっきりあらわれている。
武庫川左岸では妙見寺から清荒神にかけて高度一四〇メートル前後に高位段丘礫層が分布しているのに対して、右岸の六甲山地側では、岩倉山・譲葉(ゆずりは)山周縁の四五〇メートル付近に礫層が認められる。そして芦屋断層で切られて一段低い地塊内にある高度段丘礫層でも西宮ゴルフ場付近で二五〇メートル前後となる。この面は芦屋方面に向ってしだいに低くなり、山手町あたりでは一〇〇メートル以下になるから、高位段丘面も六甲山塊の西への傾動とともにいちじるしく傾いていることがわかる。