白砂青松

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現在の瀬戸内の森林は、ほとんど自然のものがなくなってしまったが、もとはアカガシ・ウバメガシ・シイ・クスノキ・タブ・ヤブツバキなどからなる照葉樹林であったと思われる。この森林が定着したのは、縄文海進の最盛期をすぎるころであった。そして二〇〇〇年前から小寒冷期に入ったが、基本的な構成は変わらなかった。
 海底の地層の花粉分析によると、二〇〇〇年前ころからマツが急激にふえている。弥生期の小寒冷期とともに海面はおもむろに低下し、現在は最盛期より数メートル低くなったとみられる。それにともなって武庫川その他の川は三角州を前進させ、新しい砂州や砂浜が拡大していった。このようなやせ地に最も強いのがマツだったのである。武庫川沿岸をいまも特徴づける白砂青松の風景は、二〇〇〇年前のころからはじまった。今やそれが失われようとしているのは悲しむべきことである。