表5 河川の水質分析表
試料名 | 武庫川 | 仁川 | 逆瀬川 | 太多田川 | 惣川 | 僧川 |
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採水地 | 川面 31.5~32.3 | 仁川6丁 33.6 | ゴルフ場 37.3 | 西宮市生瀬取水口 33.5 | 宝塚市上水道取水口 49.2 | 切畑西 49.1 |
採水年月 | ||||||
pH | 6.6 | 7.0 | 7.2 | 7.6 | 6.8 | 7.0 |
アルカリ度 | 15.8 | 25.0 | 32.0 | 38.0 | 12.0 | 18.5 |
塩素イオン(CI) | 37.9 | 4.5 | 3.3 | 83.0 | 4.4 | 6.5 |
硫酸イオン(SO4) | 26.1 | 5.0 | 4.2 | 5.0 | 9.0 | 7.6 |
硝酸イオン(NO3-N) | 0.19 | ― | ― | 0 | 0.07 | 0.15 |
亜硝酸イオン(NH4-N) | 0.03 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
カルシウムイオン(Ca) | 17.1 | 7.0 | 6.4 | 16.7 | 3.4 | 6.6 |
マグネシウムイオン(Mg) | 1.0 | 0.8 | 0.9 | 0.9 | 1.0 | 1.0 |
硬度 | ― | ― | ― | 2.5 | 12.6 | 20.6 |
フッ素イオン(F) | ― | 0.9 | 1.9 | 1.8 | 0.28 | 0.06 |
ケイ酸(SiO2) | 15.9 | 14.5 | 25.5 | 17.0 | 15.9 | 11.6 |
武庫川本流:小林純,武庫川支流:鶴巻道二の水質分析
逆瀬川で一・九ppm、仁川で〇・九ppmと、上水道の基準値、〇・八ppmを上まわるフッ素含有量があるのに対し、北摂山地の河川水質は、フッ素イオン含有量が〇・三ppm以下と少ない。ここに最近社会問題となっている斑状歯問題の原点がある。このような状況下でこれまでもフッ素イオン含有量の多い水源を廃止するなど、上水の改善が進められてきた。
宝塚市の水源は、生瀬・川面・小浜(武庫川左岸)と小林・高松(右岸)など、武庫川両岸の伏流水を浅井戸で取水していたが、伏流水の水質は表流水の水質と似ており、武庫川右岸の水源にフッ素含有量が約一ppmと多いことは、武庫川本流より支流の逆瀬川・仁川の影響をより強く受けているためと考えられ、これらの水源の一部はすでに廃止された。宝塚市の場合は別途、フッ素含有量の少ない水源が得られる環境にあるので問題が少ないが、フッ素イオン含有量の多い花こう岩山地にしか水源がもとめられない山陽道の各都市の悩みは深い。
フッ素問題は自然条件に起因するので、水源や給水系統の整備で防ぐことができるが、武庫川本流自体の水質汚染はみのがすことができない問題である。表中の武庫川本流の水質は、七回にわたりおこなわれた水質分析の平均値をかかげているが、この水質分析表で、塩素イオン(Cl)・硫酸イオン(SO4)のいちじるしく多いことが注目される。
この二つのイオンはいずれも人為的な汚染の結果と考えられてきたが、塩素イオンの場合は上流にある有馬温泉の影響が考えられ、有馬川および蓬莱峡・生瀬など一連の鉱泉群をもつ太多田川などがあるため、温泉・鉱泉の湧出という自然環境に起因する場合も多いのではなかろうか。それに比べて硫酸イオンの場合はまったく天然の供給源はみいだすことができず、分析表(表5)にアルカリ度が小さい値をしめすことと考えあわせ、工場廃水などの人為的な汚染を強く受けていると判断できる。